専門家会議が第3代最高指導者を決定
イランで最高指導者の選出権限を持つ専門家会議は3月8日、死亡したアリ・ハメネイ師の後継に、次男のモジタバ・ハメネイ師を選んだ。国営メディアなどが9日に伝え、新たな最高指導者としての体制移行が明らかになった。イラン・イスラム共和国において最高指導者は国家の最上位に位置し、外交、安全保障、宗教権威を一体で握る存在である。
表舞台に乏しい一方で影響力が指摘された経歴
モジタバ師は1969年9月8日生まれの56歳で、父の子ども6人のうちの1人として知られる。公職に就いた経歴はなく、演説や記者会見など公的な露出も極めて限られてきた。その半面、政権の舞台裏で強い発言力を持つとの見方は以前からあり、米外交公電では有力な実力者として扱われていた。宗教都市コムで学びを深めた後、近年は一部でアヤトラの呼称も用いられていた。
過去の選挙を巡る批判が再び注目を集める
同師の名が広く取り沙汰されたのは、2005年の大統領選と2009年の再選時だった。改革派勢力は、アフマディネジャド氏を有利にするため、宗教団体や治安組織を通じて選挙に影響を与えたと非難した。2009年の選挙後には大規模な抗議行動「緑の運動」が発生し、一部では将来の世襲的継承に対する反発も噴出した。反体制派の拘束や自宅軟禁を巡っても、同師の関与を主張する声が出ていた。
反米姿勢の継続と革命防衛隊の存在感が焦点
新指導者の下でも、対米関係で融和へ転じる材料は示されていない。時事通信が伝えた通り、トランプ米大統領は後継者選びへの関与を求め、モジタバ師の選出に「気に入らない」と不満を示した。モジタバ師は革命防衛隊と近い関係にあるとされ、米国は2019年、地域不安定化や国内弾圧への関与を理由に制裁対象に指定した。選出後、革命防衛隊は新体制を支持する声明を出し、国家運営への影響力拡大を印象づけた。
正統性の試練と安全保障環境の緊迫化が進行
今回の継承は、宗教的資格と指導力による選任を掲げてきた体制理念との整合性も問われる。最高指導者の地位が事実上の家族継承と受け止められれば、国内での反発材料になり得る。一方で外部環境も厳しさを増している。イスラエルのカッツ国防相は4日、後継者も排除の対象になり得ると発言しており、新指導者の誕生は体制安定の出発点であると同時に、対外衝突の新局面の始まりともなっている。
