日本向け提供を視野に入れた説明
米オープンAIは5月21日、サイバー防御に特化したAIモデル「GPT5・5サイバー」を日本の政府機関や企業に提供する方針を明らかにした。都内で記者会見した同社取締役のポール・ナカソネ氏は、日本側にアクセス権を提供していきたいと述べた。提供開始に向け、日本政府との対話を進める考えも示した。
同モデルは、オープンAIが今月から限定的に提供を開始した最新モデルである。対象は一部の政府機関や企業に限られ、誰でも利用できる一般向けサービスではない。サイバー防御に関わる高度な用途を想定しているため、利用には厳格な審査が設けられている。
ナカソネ氏が日本重視の姿勢を強調
会見に臨んだナカソネ氏は、米サイバー軍司令官や国家安全保障局局長を歴任した人物である。トランプ政権下で安全保障分野の要職を務め、2024年からオープンAIの取締役に加わった。こうした経歴を背景に、サイバー領域でのAI活用について日本側との連携を説明した。
ナカソネ氏は、日本が「自由で開かれたインド太平洋」において重要な立場にあると述べた。今週、日本政府と15の重要インフラ分野に関するサイバー対策を協議したことも明らかにした。政府側から強い関心が示されたとして、日本への提供を重視する姿勢を示した。
重要インフラの弱点把握を支援
GPT5・5サイバーは、4月に公表されたGPT5・5を基に開発された。システムの脆弱性を迅速に見つけ、対策を支援する機能を持つとされる。重要インフラでは一つの障害が社会全体に影響するため、早い段階で弱点を把握することが防御上の課題となる。
オープンAI幹部は、日本が最初に提供対象となる政府の一つになることを期待していると述べた。日本政府は、高性能AIをサイバーセキュリティー強化に活用する方針を持つ。今回の協議は、その方針に沿って具体的な導入を検討する動きと位置づけられる。
AI悪用への危機感が背景に浮上
サイバー防御を巡っては、AIの性能向上が防御側だけでなく攻撃側にも影響を与えている。米アンソロピックの最新AI「クロード・ミュトス」をめぐり、金融分野を中心に高性能AIが攻撃に悪用されることへの警戒感が高まっている。英政府機関のAIセキュリティー研究所は、GPT5・5がクロード・ミュトスと同等の性能を持つとしている。
高性能AIは、脆弱性の分析や攻撃手法の検討にも使われ得る。そのため、防御側が同等以上の技術を活用し、攻撃の先回りをする必要がある。ナカソネ氏は、強固なセキュリティーを構築して悪意ある主体の先を行く考えを示した。
幅広い分野への活用と管理が焦点
ナカソネ氏は、金融から重要インフラ、地方自治体、製造業のサプライチェーンまで、AIによる防御支援を幅広く波及させる考えを示した。サイバー攻撃の対象は政府機関や大企業に限られず、地域行政や産業網にも広がっている。AIを使った防御体制の整備は、各分野で共通する課題となっている。
一方、GPT5・5サイバーのような高性能モデルには、利用管理の徹底が求められる。防御に有効な能力は、悪用された場合に大きな被害をもたらす恐れがある。日本への提供を巡る協議では、アクセス権の範囲、審査手続き、運用ルールが重要な論点となる。
