オープンAI依存の見直し
米マイクロソフトは6月2日、人工知能分野で自社技術を前面に出す新たな取り組みを発表した。これまで同社のAIサービス「コパイロット」は、対話型AI「チャットGPT」を手がけるオープンAIの技術を主要部分に採用してきた。今回の発表では、自社開発モデルをそろえ、外部企業への依存を下げる方向が示された。
発表された自社AIモデルは7種で、総称は「MAI」である。用途は推論、画像、音声、文字起こし、プログラム作成などに及ぶ。マイクロソフトは、適切に使用許諾を得た良質なデータを使って一から開発したと説明しており、AIサービスの中核を自社で支える体制づくりを進めている。
推論モデルの投入が焦点
今回の発表で注目されるのは、自社初となる推論用AIモデルである。推論モデルは、文章を読み取り、筋道を立てて考える処理に対応する。マイクロソフトは「MAIシンキング1」について、アンソロピックが今年公開した「クロード・オーパス4.6」と同等の性能を示したと説明した。
同社のAI部門は、超知能に注力する組織として位置付けられている。今回、クラウドハイパースケーラーの中で最も効率的だとする音声書き起こしAIモデルも公表した。さらに、グーグルに対抗する画像生成モデルもリリースし、AI開発領域の範囲を広げた。
業務支援AIの活用拡大
マイクロソフトは、AIエージェントを活用して日常業務を支援する仕組みも強化する。従来のソフトウエアを人が操作する方式から、AIエージェントが複雑な作業を自律的に実行する方式へ移行する考えを示した。これは、AIをアプリの補助機能ではなく、業務処理の中心に置く転換である。
コパイロットには、新たなAIエージェント「スカウト」が導入される。スカウトは、利用者の判断を必要とするメールやメッセージを集める作業などに対応する。また、複数のAIエージェント群を操作できるオープンソースソフトウエア「オープンクロー」をウィンドウズ上で動かすためのツールも開発している。
AI機器で利用環境を拡張
同社は、AI機能を扱う専用機器や高性能PCも発表した。エヌビディア製チップを搭載した「サーフェスRTXスパーク・デブ・ボックス」を披露し、サティア・ナデラ最高経営責任者は「夢のマシン」と呼んだ。発表では、通常のPCでは扱いにくい1200億パラメーター規模のAIモデルが動作する様子も示された。
また、マイクロソフトはクアルコムとメディアテックの半導体を採用した試作機も披露した。端末にはスマートスピーカー型のものや、キーカード型バッジ程度の小型機器が含まれ、画面とマイクを搭載している。従来のスマートフォンのようにOSやアプリを中心に操作する機器ではなく、クラウドと接続し、AIエージェントが指定された作業を実行する仕組みとなっている。
企業利用を見据えた布陣
自社AIモデルの投入は、法人顧客への提案力を高める取り組みでもある。利用企業は、自社の業務データを学ばせて独自のモデルを育てることができる。他社AIを使う場合と比べ、利用費を抑えられる利点も示されている。
マイクロソフトは今回、モデル、端末、AIエージェント、高性能PCを組み合わせる方向を明確にした。オープンAIやアンソロピックとの競争が激化する中、自社技術を軸にAIシステム全体を構築する姿勢を強めている。今回の発表は、AIを業務端末やクラウド基盤と結び付け、企業向けコンピューティングの形を再構成する動きとなった。
