デジタルユーロ実証計画が具体化へ
欧州中央銀行(ECB)は14日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)「デジタルユーロ」の実証を2027年後半に始める方針を明らかにした。試行期間は12カ月を予定し、実際の利用環境に近い機能を備えた試行版を使って、決済技術や運用体制を検証する。
参加者にはECBとユーロ圏各国の中央銀行職員に加え、インターネット通販を手がける事業者や、飲食店など日常的なサービスを提供する店舗が含まれる。中央銀行の内部だけで完結する技術試験ではなく、消費者が実際に買い物をする場面を想定した取り組みとなる。
ECBは数年前からデジタルユーロの開発を進めてきた。今回の計画によって、構想や設計を中心とした段階から、実際の支払いを伴う検証へ移ることになる。
大手銀行やデジタル金融企業を選定
実証に参加する決済サービス事業者として、ECBは36社を選んだ。ドイツ銀行やイタリアの大手銀行ウニクレディトに加え、デジタル銀行として事業を拡大するレボリュート、米国の決済サービス企業ストライプなどが含まれている。
参加を希望した企業は50社を超えた。選定された事業者は、実証参加者が利用する口座の開設や、アプリなどを通じた決済機能の提供を担う。
従来型の大手金融機関と、オンライン金融を中心に成長した企業の双方が加わることで、異なる事業基盤やシステムを使った運用が試される。ECBは複数の決済事業者を通じ、デジタルユーロを扱う際の技術的な接続や業務手順を確認する。
店頭と通販で実際の支払いを検証
実証では、参加する中央銀行職員が試行版のデジタルユーロを使い、個人間の送金や企業への支払いを行う。インターネット通販での商品購入に加え、飲食店を含む実店舗での決済も対象となる。
デジタルユーロは、スマートフォンのアプリなどを使って店頭で支払える仕組みとして開発が進められている。利用者が支払い時に負担する手数料を無料とする点も特徴に挙げられている。
実証では、単に決済が完了するかどうかだけでなく、口座を準備してから支払いを終えるまでの一連の流れを調べる。日常的な買い物に導入した際の使いやすさや、事業者側の対応手順も検証対象となる。
ユーロ圏19中銀が試行に参加
実証はECBに加え、ユーロ圏の中央銀行21行のうち19行で行われる。ブルガリアとマルタの中央銀行は今回の実施対象に含まれていない。
各国の中央銀行職員が参加することで、複数の国や決済環境をまたぐ形で試行が進められる。ユーロ圏内で共通して使う通貨である以上、国ごとの金融システムや店舗環境の違いを踏まえた確認が必要になる。
試行版には、機能面と技術面の双方で、将来のデジタルユーロに近い仕組みが採用される。ECBは決済処理の安定性、参加機関の運用手順、利用者が操作する際の利便性を調べ、開発内容の改善につなげる。
正式導入を見据え制度と技術の準備加速
ECBは、関連する法制度の整備が2026年末までに終わることを前提として、2029年の初回発行を目標に掲げている。制度面の準備は開発計画より遅れているが、実証開始に向けた事業者選定は先行して進められた。
2027年後半からの試行では、決済の技術だけでなく、金融機関、中央銀行、店舗、通販事業者が連携する運用モデルも確認される。1年間の検証で得られた結果は、正式な仕組みを整える際の判断材料となる。
今回選ばれた36社と各国中央銀行による実証は、デジタルユーロを日常の決済手段として利用できるかを確かめる重要な工程となる。ECBは実際の利用場面に近い環境を設け、発行を見据えた技術と運用の両面で準備を進める。
