AIインフラ投資の拡大に州政府が制動措置
米ニューヨーク州は、大量の電力を消費するデータセンターについて、新規建設に関する許可審査を最長1年間中断する。キャシー・ホークル知事が14日に行政命令へ署名した。AIサービスの拡大によって施設需要が急増する一方、地域の電力供給や水利用に対する懸念が強まったことを受けた対応である。
州政府は、データセンター関連の投資を全面的に排除する方針ではない。施設の立地や運営を認める際の共通ルールが不十分だとして、いったん審査を止め、環境面と住民生活への影響を整理する。州レベルで建設許可を凍結する判断は全米初となる。
50メガワット以上の案件で未完了審査を保留
行政命令は、50メガワット以上の電力を必要とする大規模施設に適用される。州環境保護局は、現時点で完了扱いとなっていない裁量許可を新たに交付しない。停止期間は最大1年間だが、州が必要な基準を整備すれば、その時点で解除する。
州議会では6月、電力使用量が20メガワットを超える施設を対象とする規制法案が可決された。ホークル知事の署名によって成立するが、知事室は制度設計が複雑であるとして、議会側との協議を継続している。行政命令と州法案では対象となる電力規模が異なり、今後の調整が必要となる。
税制優遇の見直しと環境基準の整備を並行
ホークル知事は、データセンターに適用される売上税免除を廃止する法案の成立を目指す考えも示した。電力や水を大量に使う施設を税制面で支援することが適切かどうかを改めて検討する。許可制度だけでなく、企業誘致策のあり方も見直しの対象となる。
州当局は停止期間中、包括的環境影響評価書をまとめる。建設段階から稼働後までの電力需要、水資源の利用、周辺環境への影響を調査し、新設施設が従う統一的な条件を策定する。将来の案件を同じ基準で審査できる体制をつくることが目的である。
業界では投資先の州外移転を懸念する意見
データセンター運営大手のデジタル・リアルティは、1年間に及ぶ停止措置は適切ではないと批判した。同社は、計画中の投資がニューヨーク州外へ移る可能性が高まると指摘している。責任ある成長を実現するため、政策担当者との協議には応じる姿勢を示した。
一方、NTTグローバルデータセンターのダグ・アダムス最高経営責任者は、事業者が地域への影響をより明確に説明する必要があると述べた。雇用創出や投資効果だけでなく、環境資源の使用についても地域社会へ情報を示すことが求められるとの立場である。規制強化を対話の機会として受け止める企業もある。
データセンター立地政策に広がる見直しの動き
ニューヨーク州では、データセンターなど12ギガワットを超える大口設備が送電網への接続を申請し、待機している。州内の施設数は130カ所を超えるが、バージニア州の600カ所超やテキサス州の約500カ所と比べると少ない。それでも、大型案件の集中による電力需要の増加が問題視された。
米国で実施された世論調査では、データセンターの急速な増設に賛成する回答は約3人に1人にとどまり、多くが居住地域への建設に反対する意向を示した。ニューヨーク州の措置は、投資誘致を優先してきたデータセンター政策を、住民負担や資源利用も含めて再設計する動きである。業界には、経済効果と地域への影響を具体的に示す対応が求められる。
