日販側がアンソロピックへの書籍販売認める
出版取次大手の日販グループホールディングス傘下の企業が、米AI開発企業アンソロピックに日本の書籍を販売していたことが明らかになった。出版社約380社が所属する日本書籍出版協会が取引の事実関係を確認し、日販側から販売を認める回答を受け取った。
実際に取引を担ったのは、海外事業を展開する日販アイ・ピー・エスだった。これまで日販側は取引の有無を公表していなかったが、10月5日に書面で協会側へ回答し、翌6日に取引の事実が判明した。
2024年に契約締結し約1年間にわたり販売
日販側の説明では、日販アイ・ピー・エスは2024年11月にアンソロピックとの取引契約を締結した。書籍の販売期間は2024年12月から2025年12月までで、協会に加盟する出版社が発行した書籍も含まれていた。
一方、どの出版社の書籍を何冊販売したのかなど、具体的な取引明細は明らかにされていない。日販側は出版社から個別に問い合わせがあった場合に対応する方針を示した。出版社側にとっては、自社が発行する書籍が取引対象だったかどうかを個別に確認する必要がある状況となった。
AI学習目的との認識はなかったと日販側説明
今回の問題で焦点となっているのが、販売された書籍の利用目的だ。日販側はアンソロピックとの契約を結ぶ前に用途を確認していたと説明している。その際に受けた説明からは、AIの学習に使用するための購入だとの認識には至らなかったとしている。
アンソロピックはAI開発に関連して大量の書籍を収集していたとされる。米国で行われた著作権侵害を巡る訴訟の資料では、欧米やアジアの出版流通業者から書籍を買い集めていた状況が示され、その取引先の中には日販とみられる「Nippan Japan」の名称が複数回記載されていた。
米国の著作権訴訟から日本での取引が表面化
アンソロピックを巡っては、米国の作家らが2024年8月、書籍のデジタル化や海賊版サイトから取得した書籍データの利用によって著作権を侵害されたとして提訴していた。この訴訟は2026年7月までに和解している。
裁判資料を通じて日本から書籍が供給されていた事実が浮上したことで、国内出版業界でも問題視する動きが強まった。日本書籍出版協会は9月、日販グループホールディングスに事実確認を求めるとともに、AI学習を目的とした書籍の供給や販売を行わないよう求めていた。日販側が今回取引を認めたことで、書籍流通とAI開発の関係が改めて問われる形となった。
AI時代の著作物利用巡り出版業界に課題残る
日本では2018年の著作権法改正によって設けられた30条の4により、文章やイラストなどの著作物をAI学習に利用することは原則として認められている。ただし、著作権者の利益を不当に害する場合には無断利用が認められないという制限がある。
今回の日販側の説明では、販売された書籍の具体的な内容や出版社別の明細は公表されていない。また、日販側はAI学習を目的とした購入とは認識していなかったとしている。出版関係者からは、出版流通を担う企業による今回の取引に強い不満も出ており、AI開発に伴う書籍利用と権利者の利益をどう扱うかが出版業界の課題として浮上している。
