世界の核戦力は減少も配備状態が拡大傾向
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所は、2025年1月時点で世界の核弾頭数が12,241発と、前年より164発減少したと報告した。しかし、そのうち3,912発が配備済みで、約2,100発は弾道ミサイルに搭載されて即時発射可能な状態にあると指摘。核兵器の実戦配備が依然として脅威である実態を明らかにした。
ロシアと米国が核保有の大半を占める実態
報告によれば、核弾頭保有数はロシアが5,459発、米国が5,177発で、両国だけで世界全体の約9割を占めている。中国は600発で3位だが、年約100発の増加ペースで、最も速い拡大を示している。他にはフランス(290発)、英国(225発)、インド(180発)、パキスタン(170発)が続く。
AI導入が引き起こす軍事的誤認の危険性
SIPRIは、防衛分野における人工知能の導入が、誤認識や技術的誤作動を招く可能性があると警鐘を鳴らしている。通信障害や認知エラーによる誤った判断が、核兵器の誤使用につながるおそれがあるという。これにより冷戦終結後に続いていた核軍縮の流れに歯止めがかかる可能性も示唆された。
地域的な緊張が核リスクを加速させる背景
インドとパキスタンは、カシミール地方での衝突が核リスクを高める要因とされ、報告書は「誤情報の拡散とともに、通常戦力から核危機に発展するおそれがあった」と分析。北朝鮮についても保有数は50発とされ、最大40発分の原料を保有していると見られている。イスラエルの核保有数は推定90発とされた。
日本と中国の核政策に関する立場の違い
林官房長官は記者会見で、NPT体制の下で核兵器のない世界を目指す取り組みを継続する方針を表明。対する中国は報告書への直接的なコメントを避けつつも、「一貫して自衛的な核戦略を堅持し、核兵器の先使用は行わない」と強調した。アメリカは中国の核拡大を不透明と批判しており、今後の国際関係に緊張を残す形となっている。