ベトナム企業での会計不正が明るみに
イオンは2025年7月9日、金融子会社を通じて取得したベトナムの企業における会計上の問題を理由に、当初予定していた7月11日の決算発表を延期し、7月31日に変更すると発表した。このベトナム企業では、買収前からの会計上の不備が確認されている。
この不正は経営統合の過程で明らかになったもので、帳簿の整合性や会計基準の逸脱など、企業買収におけるリスク管理の課題も浮き彫りとなった。
約262億円で買収した企業に不正処理
問題となったベトナム企業は、個人向けローン事業を展開する現地の金融機関であり、イオンフィナンシャルサービスは2024年2月に約262億円を投じてこれを完全子会社化していた。買収後の経営統合作業の中で、買収前に行われていた会計処理の不適正が発覚した。
具体的な内容は明かされていないが、貸倒引当金の過少計上や、貸出資産の過大評価といった手法が疑われており、企業価値の見積もりにも誤差があった可能性がある。
契約無効を主張、現地銀行と協議継続
イオン側は問題発覚後、当該企業を譲渡した現地の金融機関に対し、買収契約の無効を正式に通知している。これは、2025年6月6日付の資料でも確認されており、買収条件が大きく崩れたことに伴う契約上の再交渉が続いていると見られる。
イオンフィナンシャルサービスは現在、取得企業との協議を継続しており、契約の見直しや損失補填に関する対応を検討中である。
2026年2月期の業績見通しは引き続き分析中
会計処理の不適切さが連結決算にどの程度影響するかについては、現時点では「精査中」とされている。ただし、買収にかかった金額と子会社化の比重を考慮すれば、一定の減損リスクや会計修正が発生する可能性は否定できない。
このため、7月31日の発表時には修正報告の有無や、26年2月期通期見通しへの影響が注目されることになる。
現地戦略にも遅れ、再構築に時間を要す
一連の問題により、イオンフィナンシャルサービスによるベトナム市場への進出戦略も遅れを余儀なくされている。同社はアジア展開を成長戦略の柱と位置付けており、今回のような統合失敗は経営全体にとっても打撃となり得る。
今後の重点は、リスク管理の強化と事業再編の実施に移る見通しであり、同地域での信頼回復と安定成長が問われることになりそうだ。