米関税強化に対するEUの防衛的措置が明らかに
欧州委員会は7月14日、トランプ政権がEU製品に対して30%の関税を課すと表明したことに反発し、約720億ユーロ(約12兆4000億円)相当の米製品に対する報復関税案を準備していることを明かした。これは、5月に公表された案から約230億ユーロ縮小されたが、依然として大規模な対抗措置となる。
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報復対象には航空機・医療機器・農産品も
報復関税の対象には、ボーイング製の航空機やバーボンウイスキー、自動車などの主要製品に加え、医療機器や化学品、農産品なども含まれる。206ページに及ぶ対象リストには、米国の産業に幅広く影響を与える内容が盛り込まれており、鉄鋼・アルミ関税への対抗策の第2弾と位置づけられている。
EUは交渉継続を優先も「報復の構え」は維持
シェフチョビッチ欧州委員(通商担当)は14日夜に米商務省のラトニック長官と、15日には米通商代表部(USTR)グリア代表と協議を行った。EU報道官は「8月1日までに米国が関税を実行しなければ、報復発動は見送る」としながらも、対抗措置を行使する可能性は残しているとした。
日本・カナダとの協調で対米連携強化を模索
EUは、通商分野での協定強化と国際的な協調を進める中で、日本およびカナダとの関係深化にも取り組んでいる。今月中に予定されている日EU首脳会談では、「競争力アライアンス」立ち上げに向けた共同声明が準備されている。フォンデアライエン委員長は14日、カナダのカーニー首相と電話で、防衛分野や製造業に関する連携強化を協議した。
米主導の通商秩序再編が生む国際的摩擦の波
トランプ大統領は、米国第一の通商政策を掲げ、一方的な関税措置によって国際貿易の再編を主導しているが、これにより各国は米国への依存からの脱却を余儀なくされている。ブラジルのルラ大統領も、「米国以外の貿易相手国を探す必要がある」と述べており、通商摩擦が世界経済に与える影響は拡大しつつある。