初任給引き上げで若手の人材確保を強化
人事院は8月7日、2025年度の国家公務員の給与について、月給・ボーナスともに引き上げを勧告した。特に注目されるのは、大卒総合職の初任給を1万2000円増額し、手当込みで30万1200円とする点で、初めて30万円の大台を突破することになる。人材確保に向けた施策の一環として、若年層への重点配分が強調された。
政府全体で34年ぶりの大幅な月給増加に
人事院が内閣と国会に提出した勧告によると、公務員の月給は約1万5000円、割合で3.62%の増額が見込まれている。これは3%を超える改定としては34年ぶりとなる。また、年間のボーナスは4.65か月分に増やすよう求められており、基本給と賞与の両方で増額が継続するのは4年連続となる。
この改定は、地方を含む民間企業における賃上げの動向や、人材獲得競争の激化に対応するものとして位置づけられている。
民間比較基準の見直しが勧告の背景に
今回の勧告では、公務員給与の比較対象となる企業の条件も見直された。これまで「従業員50人以上」としていた基準が「100人以上」に変更され、本府省勤務者に関しては「東京23区に本店を置く1000人以上の企業」との比較が採用された。この変更により、民間との給与格差が明確になり、公務員の給与水準が相対的に低いことが浮き彫りとなった。
幹部クラスにも手厚い支給が加わる見通し
今回の勧告では若年層だけでなく、管理職や幹部職員への手当も盛り込まれている。例えば、本省勤務の室長(40歳)の年収は1089万6000円(91万8000円増)、課長(50歳)は1447万3000円(99万1000円増)、局長は1938万6000円(120万1000円増)となる見込みだ。
さらに、本省幹部や管理職には月額5万1800円の特別手当が新設される方針が示されている。
勧告の波及効果と政権の姿勢が注目される
石破首相は「民間の賃上げの流れが反映されたものであり、公務員全体の人材確保に資する内容だ」と述べ、政府内での前向きな議論に意欲を示した。また、今回の勧告が「地域経済の賃上げや待遇改善にも良い影響を与えることを期待する」とも語っている。
一方、人事院の川本総裁は記者会見で、「若年層と中堅以上へのバランスの取れた引き上げで、職員のモチベーション向上と高いパフォーマンスを促す」と述べた。