募集状況を示す動きが明確化
三菱ケミカルで実施されていた希望退職の募集が8日に公表され、応募者数が1273人となった。対象者は国内の満50歳以上で勤続3年以上の社員に限定され、製造現場の従事者を除く約4600人であった。このうち3割が応募した形となり、同社が進める人員構成の見直しが具体的に動き出したことが示された。今回の制度は人数を限定しない形式で告知されており、過去の合併によって拡大していた組織のスリム化を進める意図があった。
退職条件と費用計上の内訳
退職日は2026年2月末とされ、退職一時金に加えて特別加算金が支給される。必要経費はおよそ320億円と見込まれており、そのうち277億円はすでに2025年4〜9月期決算に計上されている。残額も2026年3月期の連結決算に反映される予定で、同社の業績見通しへの影響は織り込み済みと説明されている。今回の費用は一時的な負担ではあるが、長期的には固定費の縮減につながる項目として位置づけられている。
労務費削減と財務計画の位置づけ
希望退職によって見込まれる効果は年間約160億円の労務費削減であり、三菱ケミカルグループの収益構造にとって大きな改善要素となる。同グループは2026年3月期の純利益を1250億円と予測しており、今回の削減によって新規事業への投資余力を確保しやすくなる構図がある。年齢分布では50代の比率が高いことが課題とされており、経営陣は人員構成の歪みを是正することが成長戦略上不可欠だと説明していた。
事業再編の継続と重点領域
三菱ケミカルグループは2025年7月に医薬事業を担っていた田辺三菱製薬を売却し、現在は化学事業と子会社である日本酸素ホールディングスによる産業ガス事業を中心に再編を進めている。化学分野では採算性の低い領域から撤退を進め、人材派遣や保険代理業など非中核の事業についても売却を進行中である。これらは資源を成長分野に投入するための土台づくりの一環となっている。
今後の組織体制に向けた展望
今回の希望退職は、長期的な事業運営に向けた体制整備の柱として位置づけられている。半導体材料など成長性の高い領域への経営資源集中が進められており、固定費圧縮によって研究開発や設備投資を持続的に実施できる環境を形成しようとしている。同社が抱えていた組織膨張の課題に一定の区切りをつける施策であり、今後の改善効果が業績にどのように表れるかが注目される。
