米政権が示した新たな輸出方針
米政権は8日、エヌビディア製の先端半導体「H200」を中国を含む特定の顧客に輸出する手続きを認める方針を明らかにした。対象となる企業は米商務省による承認を受ける必要があり、輸出は追加の条件を伴って実施される。今回の判断には、AI分野における米国の主導権維持と産業基盤の確保を同時に進める狙いがあるとみられる。
25%の徴収措置と審査の仕組み
政府は輸出に際し、チップ価格の25%を米国が受け取る制度を導入する。徴収は台湾から米国内へチップが入る段階で適用され、その後に米当局による詳細なセキュリティ点検を経て輸出が認められる仕組みとなる。これにより収入確保と安全保障上の監視強化を両立させる体制が構築されることになる。
習主席とのやり取りと米企業への波及
トランプ大統領はこの措置について中国の習近平国家主席に直接伝えたと述べ、習氏が肯定的な反応を示したと説明した。大統領は米企業の競争力維持を強調し、エヌビディア以外にもAMDやインテルなどの米半導体メーカーへ同様の手法が適用される可能性に触れた。米国では既に「ブラックウェル」などより高性能な次世代モデルの導入が進んでおり、国内産業の優位性は維持されるという立場を示している。
安全保障面での懸念と専門家の評価
一方、米議会では今回の判断が中国の軍事力強化に寄与する恐れがあるとの懸念が広がっている。超党派の議員グループは、AI半導体の対中輸出に制限を課す法案を提出しており、今回の措置がその動きと矛盾するとの批判もある。元商務省高官は「安全保障を経済的利益と交換すべきではない」と指摘し、従来の対中政策との整合性の欠如を問題視した。
今後の輸出管理の焦点
米商務省は輸出数量や審査基準などの詳細を今後詰める方針で、具体的な枠組みは近く公表される見通しである。H200は既に海外市場で高い需要を持つが、安全保障上のリスクとの調整が問われる局面となる。米中のAI分野をめぐる競争は激しさを増しており、今回の決定がその構図に新たな影響を与える可能性がある。
