研究体制強化の背景に広がる需要
ダイキン工業は、米国で拡大が続くデータセンター向け空調事業を強化するため、ミネソタ州に研究施設を構える計画を発表した。投資額は1億6300万ドルで、実際の稼働開始時期は2027年とされる。データセンターでは高性能化が進み、サーバーから発生する熱量が年々増加しており、この課題に応える研究開発の重要性が高まっている。
同社は北米市場でのプレゼンス向上を重視しており、新拠点を通じて開発工程の効率化や評価体制の強化を図る。市場全体の規模が急拡大する中、研究設備を早期に整備することで事業の成長速度を高める狙いがある。
実運用を再現した試験環境の構築
設立される研究施設は、大規模データセンターの運用環境に近い条件を再現できる点が特徴だ。サーバー機器が高密度化する中、試験環境の再現性は冷却装置の開発に不可欠となっている。延べ床面積約7万1000平方フィートの施設には、高負荷条件での連続試験を実施できる設備が整えられる。
空冷方式に加えて、液体を循環させて熱を奪う液冷方式についても重点的に研究する。データセンターの構成が多様化する中、複数の冷却手法を並行して検証することで、顧客の要求に応じた提案力を高める方針だ。
事業成長を支える長期的な収益計画
ダイキンは、北米でのデータセンター向け事業売上高を2030年度に足元の3倍となる3000億円超に引き上げる計画を示している。市場規模は2030年には約2.7兆円へ拡大すると予測され、冷却装置の性能強化が企業競争力に直結する状況が続く。
今回の研究施設整備は、将来的な事業拡大を見据えた取り組みとして位置づけられ、製品開発力の底上げと技術資産の積み上げに寄与するとされる。北米全体で設備投資が活発化する中、同社は確かな研究基盤の構築によって市場での優位性を確保しようとしている。
M&Aを通じて拡大した技術領域
ダイキンはここ数年、データセンター冷却技術を補完するための企業買収を積極的に進めてきた。2025年には、ラック単位で冷却する技術を持つDDCSと、液冷装置に強みを持つチルダインを取得している。これらの技術は、新施設における研究テーマとしても重要度が高い。
加えて、2023年には空調機器の一部工程で強みを持つ企業を取り込み、製品群の充実を図っている。M&Aによって獲得した多様な技術を組み合わせることで、総合的な冷却ソリューションの提供体制を固める構想が進められている。
冷却技術革新に向けた取り組みが加速
市場では、大規模サーバーの運用に伴う電力消費や熱管理が大きな課題となっている。ダイキンは、研究開発体制の拡充を通じて冷却技術の高度化を進める姿勢を崩していない。空調製品の高効率化、液冷技術の性能改善、実運用を考慮した設計手法の確立など、多方面での取り組みが求められている。
今回の投資は、北米における技術競争を勝ち抜くための基盤整備といえる。研究成果が製品開発に反映されることで、データセンター市場の拡大局面での競争力向上が期待されている。
