ホンダ発事業として新会社設立発表
ホンダは2026年3月31日、砂漠の砂を原料として建設資材を生産する新会社「パスアヘッド」を設立したと公表した。同社はファンド2社と共同で設立され、ホンダも出資しているが出資比率は20%未満とされている。
この新会社は、ホンダの新事業創出制度「イグニッション」から誕生した取り組みである。同制度は2017年に研究開発子会社で始まり、2021年には対象を全社に広げ、新たな事業創出を目的として運用されてきた。
新会社の最高経営責任者には、企画の発案者であり、自動車開発に携わった経験を持つ伊賀将之氏が就任した。これまでの研究や技術の蓄積を背景に、新たな産業分野への進出を図る。
砂漠の砂を加工する独自技術の確立
従来、砂漠の砂は粒子が非常に細かく、コンクリートなどに用いる骨材として適さないとされてきた。このため建設用資材には主に河川や海岸から採取された砂や砂利が利用されてきた経緯がある。
パスアヘッドは、こうした課題を解決するため、細粒の砂を加工して建設用途に適した大きさや形状に整える独自の技術を確立した。この技術では薬剤の使用や加熱、圧縮といった工程を経て、従来材料と同等の性能を持つ骨材を生成する。
新たに開発された素材は、道路舗装やコンクリート製造に活用することを想定している。さらに、耐久性の面でも既存材料と同等、あるいはそれ以上の性能が期待されている。
ケニア量産拠点と市場開拓の計画
同社はアフリカでの需要拡大を見据え、ケニアに生産拠点を設ける計画を示した。現地の砂漠から原料を調達し、2028年に量産を開始する予定としている。
製造された骨材は、主に道路建設向けのコンクリート材料として、地域の建設事業者などに供給する見込みである。アフリカでは都市化の進展とともにインフラ整備の需要が高まっており、安定した資材供給の必要性が指摘されている。
同社は既存資材と同程度のコスト水準を目指しており、価格面でも競争力の確保を図る。供給網の整備と現地での生産体制の確立が、事業拡大の重要な要素となる。
売上目標と海外展開の中長期戦略
パスアヘッドは、2031年の営業黒字化を目標としている。さらに、2032年には売上高200億円、2034年には430億円規模への拡大を見込んでいる。
伊賀社長は、道路整備の課題は特定地域に限らないと指摘しており、将来的にはアフリカ以外の地域にも事業を広げる構想を示している。具体的には、砂漠が広がる中東や中央アジアなどへの進出が検討対象として挙げられている。
こうした地域では建設資材の確保が課題となるケースもあり、砂漠の砂を活用する技術の応用範囲は広いとされている。地域特性に応じた供給体制の整備が重要になる。
新規事業創出制度の成果として期待
今回の取り組みは、ホンダが進めてきた新規事業開発制度の成果の一つとして位置付けられる。同制度では、これまでに電動キックボードなど複数の事業が生まれており、社内の技術や発想を活用した新分野開拓が進められてきた。
砂漠の砂を資源として利用する今回の事業は、資源活用の新たな可能性を示すものといえる。原材料の選択肢を広げることで、インフラ整備における資材確保の手法にも変化をもたらす可能性がある。
今後は実証や量産の段階を通じて、製品性能や供給体制の確立が求められる。市場への本格供給が始まれば、新しい建設材料の利用が拡大する見通しである。
