中東情勢悪化が地域経済の主要議題に浮上
日本、中国、韓国と東南アジア諸国連合は5月3日、ウズベキスタン・サマルカンドで財務相・中央銀行総裁会議を開いた。会議では、中東情勢の悪化がアジア地域の経済に与える影響が主要な議題となった。共同声明には、中東での紛争拡大が地域経済の先行きに対する下振れ要因を強めているとの認識が盛り込まれた。
今回の会議は、同日に始まったアジア開発銀行の年次総会に合わせて開催された。日本はフィリピンとともに共同議長を務め、日本からは片山さつき財務相と日銀の氷見野良三副総裁が出席した。中国は閣僚級の出席を見送った。
石油供給不安と物価上昇への警戒共有
参加国は、原油や液化天然ガスへの依存度が高いアジア経済にとって、中東情勢の緊迫がエネルギー供給の安定性を損なう要因になると確認した。共同声明では、紛争が長引いた場合、エネルギー価格だけでなく、産業製品、物流、食料価格、観光にも影響が広がるとした。
中東からの資源輸入に依存する国々では、供給制約や価格上昇が成長率の低下やインフレ加速につながる可能性がある。会議後、片山財務相は記者会見で、原油やLNGの供給状況を踏まえ、経済や金融面への影響を注視する重要性について認識を共有したと説明した。
金融市場の変動に各国が警戒姿勢を表明
共同声明では、金融市場をめぐる過度な変動や秩序を欠く動きに対する警戒も示された。各国は、それぞれの国内事情に応じて適切に対応する用意があると明記し、通貨や市場の安定を重視する姿勢を打ち出した。
この表現は、急激な通貨安や投機的な市場変動へのけん制を含むものと受け止められる。中東情勢の悪化によって資源価格や資金の流れが不安定化すれば、アジア各国の金融政策や為替政策にも影響が及ぶ。参加国は、市場の混乱が実体経済に波及する事態を避けるため、連携の必要性を確認した。
多国間主義と供給網強化の重要性を確認
共同声明は、経済の不確実性に対応するため、多国間主義を維持し、地域の結束と協力を強める重要性を強調した。世界貿易機関を中心とする多角的貿易体制への支持も再確認され、公正な国際経済秩序の維持が重要課題として位置付けられた。
エネルギー安全保障とサプライチェーン強化についても、参加国の共同の取り組みを歓迎するとした。日本が掲げるアジアでの資源供給協力の枠組み「パワー・アジア」も例示された。片山財務相は、地域協力の必要性で一致し、助け合いながらサプライチェーンの多様化に取り組むと述べた。
災害リスク対応とADB名古屋開催も決定
会議では、政府向けの災害保険の普及を促す「災害リスクファイナンス」の体制整備でも合意した。事務局を8月からアジア開発銀行に設置し、東南アジア各国で災害保険の加入を促す仕組みを強化する。台風や地震による経済的損失を抑える狙いがある。
また、2027年のアジア開発銀行総会を名古屋市で開催することも決まった。中東情勢、エネルギー供給、金融市場、災害対応といった複数の課題が重なる中、日中韓とASEANは地域経済の安定に向けた協力を前面に掲げた。
