米中会談前に日本で協議
米国のベッセント財務長官は5月11日、日本を訪れた。今週後半には中国でトランプ大統領と習近平国家主席による米中首脳会談が予定されており、日本訪問はその直前に組み込まれた外交日程となる。
同氏は羽田空港到着後、訪日の目的について「幅広い議題がある」と説明した。12日には高市早苗首相と片山さつき財務相らとの会談に臨む。米国が対中協議に向かう前に、日本と経済・安全保障分野の認識を調整する場となる。
ベッセント氏は13日に韓国へ移動し、中国の何立峰副首相と協議する予定を示している。中国商務省も、ソウルでの協議では貿易問題が焦点となることを確認している。日本、韓国、中国をめぐる一連の動きは、米中首脳会談前の調整を示している。
レアアースと安保が焦点に
日本での会談では、経済安全保障が主要なテーマとなる。ベッセント氏はSNSで「経済安全保障は国家安全保障そのものだ」と述べており、資源、供給網、国際情勢を一体的に扱う姿勢を明確にしている。
特に注目されるのがレアアースである。中国が圧倒的なシェアを持つ重要資源であり、電動化、半導体、防衛関連技術など多くの分野で欠かせない。日米両国は、特定国への依存を抑え、供給網を安定させる必要性を共有している。
会談では、サプライチェーンの強化に加え、イラン情勢への対応も扱われる。中東情勢はエネルギー輸送や原油価格を通じて日本経済にも影響する。米国と日本は、国際的な緊張が高まる中で政策協調を確認する。
為替と金利に市場が注目
ベッセント氏の訪日は、為替市場が神経質な局面にある中で行われた。日本の通貨当局は円安に対応するため、複数日にわたり大規模な円買い介入を実施したとみられている。市場関係者は、日米協議で為替がどのように扱われるかを注視している。
ベッセント氏はこれまで為替介入に慎重な見方を示し、日銀の利上げを支持してきた。昨年8月には、日本がインフレに直面しており、日銀が対応で遅れている可能性に言及した。10月の訪日時にも、政府が日銀に物価抑制へ向けた裁量を与えるべきだと主張した。
今回の協議は、6月中旬の日銀金融政策決定会合で利上げ観測が高まる中で行われる。日本国債利回りは上昇を続けており、10年物利回りは4月に1997年以来の高水準に達した。日本の金利動向は、米国債市場にも影響し得る要素となっている。
1月会談で財政運営に圧力
ベッセント氏は1月、スイス・ダボスで片山財務相と会談した際、日本の財政運営をめぐって強い姿勢を示したとされる。日本国債の急落が米国債市場に波及する中、同氏は矢継ぎ早に論点を示し、日本側に厳しい対応を求めたと伝えられている。
その後、ベッセント氏は米メディアで、日本側が市場を落ち着かせるため発信すると確信していると述べた。片山氏は間もなく、市場に冷静な対応を呼びかけ、責任ある持続可能な財政政策を進める姿勢を強調した。これにより、投資家の一部にあった不安は和らいだ。
高市政権は積極的な財政政策を掲げ、消費税減税も検討している。投資家の間では、財政拡張が長期金利やインフレに与える影響への関心が続く。米国側は、日本の財政政策が米国債利回りに及ぼす波及にも注意を向けている。
日本政策の国際影響が鮮明に
ベッセント氏は日本に詳しい米財務長官として知られる。1990年以降の訪日は今回で54回目とされ、バブル崩壊後の停滞、アベノミクス、日銀の金融緩和終了まで、日本経済の大きな転換を見てきた。
同氏はヘッジファンド運用者時代、日本の金融政策と円相場の変化に注目し、対日投資で成果を上げた。日銀の大規模緩和が最終局面に入ったとの見方を示し、日本が世界の金利環境に与える影響にも言及してきた。
今回の来日は、日本の政策が国内問題にとどまらないことを示している。財政、金利、為替、資源調達、対中戦略は相互に結びつき、米国の経済政策にも関係する。高市政権にとって、米国との協力を維持しながら国内政策の主導権を確保することが重要な課題となる。
