月面での電力供給体制構築に向け計画前倒し NASAは、2029年末までに月面で原子炉を運用する体制の整備を進めていることが、内部の文書で判明した。これは、今後の月面活動における持続的な電力確保を目的としたもので、当初想定されていた2030年代初頭から前倒しでの実施を目指す形となっている。 出力100キロワット以上の新型原子炉を開発へ 内部文書によれば、稼働させる原子炉の最低出力は100キロワットと明記されており、これまでの想定であった40キロワットから大幅に増強される。NASAは今後6か月以内に民間から提出された計画案のうち2件を選定する方針で、新型原子炉の開発を迅速に進める構えだ。 中国・ロシアの共同構想への対抗が背景に この決定の背景には、中国とロシアが共同で2030年代半ばに月面原子炉を建設する構想を公表していることがある。NASA幹部は、「月面に基地を建設するには大量のエネルギーが必要だ。我々は月面開発競争の中にいる」と述べ、競争の先手を打つ必要性を強調した。 米主導のアルテミス計画の戦略的優位性確保 文書では、中国・ロシアに先行されることで「立ち入り制限区域」を設定されるリスクに言及し、米国が先に原子炉を建設しなければアルテミス計画における国際的プレゼンス確立が妨げられると警告している。これにより、科学目的よりも戦略的目標が重視される新たな局面に入った形となる。 トランプ政権の宇宙政策と予算制約の影響 ドナルド・トランプ政権下では、NASAのミッションが基礎科学の探求よりも有人宇宙飛行に重点を移す方向へと見直されている。同時に、同政権は宇宙機関への予算削減案を検討中であり、これが月面原子炉建設の実行に影響を及ぼす可能性もある。
職員の大量退職が組織の人員体制に影響 NASAは職員の2割超にあたる約4000人が早期退職を申し出たと発表した。退職者の募集はトランプ政権の連邦職員削減策の一環で、7月25日を締め切りとして実施された。これにより職員数は約1万8000人から1万4000人前後にまで減少する見込みとなり、NASAの業務遂行能力に大きな負担が生じると指摘されている。 予算削減が進む中での構造改革が判明 トランプ政権は政府全体の支出削減方針を掲げ、NASAの2025年度予算を前年度比24%削減するとしていた。この大幅な削減は探査計画や研究開発の縮小を余儀なくする可能性が高く、組織改革と人員整理が同時進行する状況が浮き彫りとなった。 職員らが公開書簡で問題提起 今月21日、職員約360人は「ボイジャー宣言」と題した公開書簡を発表し、急速な改革がNASAの使命を損なっていると訴えた。書簡では、この半年間に無駄な変更が重ねられ、労働環境や士気が深刻に低下したと指摘している。 長官人事の混乱が組織運営を阻害 NASAでは指導部人事の不安定さが続いている。トランプ大統領は一度、実業家のアイザックマン氏を長官に任命すると発表したものの後に撤回し、その後7月9日にダフィー運輸長官が暫定的に職務を兼務するとされたが、現在も事実上の長官不在が続いている。 宇宙探査計画への影響が拡大 人員削減、予算縮小、指導体制の不安定さが重なり、月や火星探査といった長期計画への影響が避けられない状況が生じている。効率化と探査能力維持の両立を求める声は強まっており、NASAは今後の方向性を問われている。
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