医薬特許の侵害巡り知財高裁が判断
知的財産高等裁判所は5月27日、東レが自社の医薬品に関する特許を侵害されたとする訴訟で、後発医薬品を扱う沢井製薬および扶桑薬品工業に対し、合計217億円の損害賠償を命じた。判決は、原告の特許権が正当に及ぶ範囲を侵害していたと判断したもので、東レにとっては大きな法的勝利となった。
特許延長申請の背景と後発薬の登場時期
東レは、有効成分「ナルフラフィン」を使用したかゆみ改善薬に関する特許について、2017年に特許庁へ延長を申請していた。一方、沢井製薬と扶桑薬品は2018年、この成分に添加物を加えた製品を後発薬として製造・販売していた。東レはこれが自社特許の侵害にあたると主張し、訴訟を提起した。
一審での敗訴から高裁での逆転へ
東京地裁の一審判決では、東レの請求は棄却されていた。しかし東レは控訴し、今回の高裁判決で逆転勝訴を収めた。沢井製薬には約143億円、扶桑薬品には約75億円の支払いが命じられた。東レは「医薬品分野における重要な判決であり、主張が認められた」とコメントを出した。
被告企業は最高裁への上告を表明
敗訴した両社は判決に強く反発。沢井製薬の親会社は「到底受け入れられない判決」とし、上告を含む法的手段を検討すると明かした。扶桑薬品も「極めて遺憾」とし、すでに最高裁への上告準備を進めていることを明らかにしている。
今後の医薬品開発と特許戦略に影響か
今回の判決は、製薬業界における特許権保護の重要性を改めて示すものとなった。後発薬開発における技術的工夫や、特許の有効範囲の見極めが、今後の医薬品市場に与える影響は大きいと見られている。