北海道大学がリュウグウ由来の岩石を初分析
北海道大学の研究グループは、小惑星「リュウグウ」から採取された物質の中に、約45億6,730万年前に形成された岩石を含むことを確認した。これは、リュウグウの構成物質の年代測定としては世界で初めての成果とされる。研究には同大学大学院理学研究院の専門チームがあたり、2025年7月17日にその成果を公表した。
太陽系最初期に形成された固体物質を特定
発見されたのは「CAI(カルシウム・アルミニウム含有物)」と呼ばれる固体物質で、主にカルシウムとアルミニウムから成る。この成分は、太陽系が誕生した初期の高温状態、すなわち太陽に極めて近い領域で1,000度を超える熱のもとで形成されたと考えられている。小惑星リュウグウにこの物質が含まれていたことは、同天体が太陽系初期の原材料を保存していたことを示す。
放射性元素による正確な年代測定に成功
今回の成果では、CAIに含まれる放射性元素の崩壊を分析することで、その形成時期が極めて正確に特定された。この手法により、約45億6,730万年前という年代が導かれた。これは、太陽系の形成時期と一致しており、同時代に生成された岩石として世界最古級の記録となる。
「はやぶさ2」計画の意義が改めて浮上
小惑星リュウグウは、日本の探査機「はやぶさ2」によって回収された試料の対象である。2014年に打ち上げられた「はやぶさ2」は、2019年にリュウグウへの着陸に成功し、サンプルを地球に持ち帰った。その成果の一つが今回の分析結果であり、宇宙探査と地球外物質の科学的解明に大きな貢献を果たしている。
太陽系進化の理解に資する発見
この発見は、太陽系の成り立ちや進化の過程を理解する上で、重要な科学的手がかりとなる。特に、太陽系初期に存在した高温環境や物質の移動、惑星の材料の成因を探る研究において、このCAIの分析が果たす役割は大きい。今後は、リュウグウの他の試料との比較や、同様の物質の存在の有無が国際的な研究テーマとなる見通しである。