不動産不況の象徴が市場退場へ
中国恒大集団は香港証券取引所の決定により、8月25日付で上場廃止となる。株式は2024年1月以降売買停止状態が続き、再開条件を満たせなかった。かつて中国最大規模の不動産開発会社として成長したが、近年は巨額負債による経営破綻で市場からの信頼を失った。
栄光から破綻までの歩み
恒大は2017年に時価総額500億ドル超を記録し、不動産業界のトップ企業として急成長した。しかし、過剰な事業拡大と資金繰り悪化により、2021年12月にはドル建て債で初の債務不履行を発生させた。2023年6月末時点での負債総額は約2兆3882億元(約49兆円)に膨らみ、中国不動産市場の危機を象徴する存在となった。
売買停止から上場廃止までの経緯
香港市場では、売買停止が18カ月を超えると上場廃止の対象となる規定がある。恒大は2024年1月から取引停止となり、2025年8月8日に正式な通知を受領。今回の退場は規定通りの流れであり、株主にとって株価回復の望みはほぼ絶たれることとなった。
中国不動産業界全体への影響
恒大の退場は、同様のリスクに直面する他の不動産開発会社にも影を落とす。中堅の当代置業(中国)は1年以上売買停止中であり、徳信中国もすでに清算命令を受けている。中国全体の不動産開発投資は2025年上半期に前年同期比11.2%減と大幅減少が続いている。
当局の支援策と市場の反応
中国当局は融資条件の緩和や不動産取引促進策を打ち出しているが、消費者の住宅購入意欲は低迷したままだ。恒大の事例は、単一企業の経営危機が市場全体に波及しうることを示しており、不動産不況からの脱却にはなお時間を要する見通しである。