国際事業整理の可能性が浮上
電通グループが海外事業の売却を検討していることが、8月28日に英フィナンシャル・タイムズで報じられた。欧米やアジアで展開する広告・メディア関連部門が対象とされ、売却規模は数十億ドルに達する可能性がある。全面売却となれば、国際的な事業展開を大きく縮小する局面を迎えることになる。
過去の大型買収から現在の苦境へ
2012年に電通は英イージス・グループを約32億ポンドで買収し、世界第5位の広告グループへと躍進した。しかしその後、顧客の競合への流出や広告費の削減が相次ぎ、海外事業の収益は低下した。近年は欧州やアジアで業績が振るわず、国際戦略の再構築が求められている。
赤字継続と人員削減の現状
2025年12月期の営業損益は35億円の赤字を見込んでおり、同社は既に3400人超の削減を含む大規模リストラを実施中である。事業構造の改革なしには、赤字体質からの脱却が難しいとの見方が広がっている。売却検討は、こうした財務状況の改善策の一環と位置付けられる。
複数の選択肢を検討と関係者証言
報道によれば、電通は金融機関を通じて投資会社や同業他社に打診しており、部分売却や全面撤退など複数の選択肢を比較検討している。年末までに具体的な方向性を固める意向とされるが、現時点で最終決定はされていない。経営陣は「企業価値を高めるためにあらゆる可能性を探っている」との姿勢を示している。
国際広告市場への影響が注目
電通はかつて日本最大手として世界市場に存在感を示してきたが、今回の動きはその立ち位置を揺るがす可能性がある。欧米を中心に競争が激化する広告市場で、日本発の大手が存在感を後退させることは業界再編に波及しかねない。今後の決断は、国内外の広告市場に広範な影響を及ぼすものとみられる。