脱炭素に向けた新たな研究拠点が公開
トヨタ自動車は28日、福島県大熊町に整備したバイオエタノール燃料の研究施設を公開した。この施設では非可食植物「ソルガム」を原料に用い、従来のトウモロコシやサトウキビに依存しない低炭素型燃料の開発を進める。食料との競合を回避できる点が大きな特徴とされ、持続可能な燃料技術の確立に向けた取り組みが始まった。
ソルガムを活用したセルロースエタノール
研究所では、痩せ地でも育つソルガムを活用した「セルロースエタノール」の開発が進んでいる。生成した燃料を混合し、低炭素ガソリンとして利用できることを目指す。今年9月にはレース場でのテスト走行を予定しており、実用化に向けた技術検証が本格化する。来年4月の全日本スーパーフォーミュラ選手権での使用が視野に入れられている。
年間60キロリットル生産可能な施設
敷地面積は約4万平方メートルに及び、年間60キロリットルの生産能力を備えている。運営は「次世代グリーンCO2燃料技術研究組合(raBit)」が担い、トヨタのほかENEOSやスズキ、SUBARU、マツダなど7社が参加。共同で製造技術を高めることで、燃料供給体制の確立を目指す。
内燃機関技術と雇用維持の観点
トヨタの中嶋裕樹副社長は取材に対し、「ビジネス化は別問題だが、普及に向けた技術確立が重要だ」と述べた。また「バイオ燃料は内燃機関の技術やサプライヤーの雇用を守りつつ脱炭素化を実現できる可能性を持つ」と強調し、産業構造を支える観点からも注目度が高まっている。
自動車産業への広範な影響
近年、電気自動車が注目される一方、部品点数の少なさから部品メーカーの先行き不安も指摘される。バイオ燃料の普及は、既存のエンジン車を支えるサプライチェーンの維持に寄与するとみられる。福島から始まるこの取り組みは、自動車業界における新たな脱炭素戦略の一端を示している。