サイバー攻撃被害の実態が判明
アスクルが10月19日に受けたランサムウエア攻撃の影響が、11月の事業成績に大きく表れた。法人向けサービスは1カ月の売上高が前年同期間比で約95%減まで落ち込み、主要事業が機能不全に陥った。受注停止期間が続いたことで、物流や出荷体制の多くが停止し、関連する業務全体が深刻な制約を受けた。事業の再開は部分的に進んでいるが、依然として通常稼働には至っていない状況が続く。
法人向け売上急減の影響が判明
法人向け「アスクル」事業は売上高が17億円にとどまり、前年に比べて94.6%減という異例の水準となった。受注停止が長期化したことで、多くの企業が必要な物品を調達できない状態となった。業務用の消耗品を扱う同社にとって、取引量の大幅減は業績に直結し、月次の売上高がここまで縮小する事例は極めてまれだ。流通網の停止が法人需要に直接影響し、全国規模で利用者が不便を強いられる結果となった。
個人向けサービス停止の影響が判明
個人向けの「ロハコ」事業は11月の売上が約300万円にとどまり、ほぼ停止状態が続いた。法人向けと比べ再開が遅れており、12月1日時点でも受注停止が継続している。日用品や生活雑貨を扱うサービスの停止は、家庭向けの購入手段が一部制限されることを意味し、利用者側の選択肢も狭まったままだ。停止期間が長引くことで、個人向け事業の収益にさらなる悪影響が生じている。
決算発表延期が示す事態の深刻さ
アスクルは当初12月15日に予定していた決算発表を延期すると明らかにした。サイバー攻撃の影響範囲が広範であることから、業績集計や内部確認の作業に時間が必要となったためだ。月次売上の急減は財務状況の把握にも影響し、通常の決算作業が難しい状態にある。企業活動の根幹にある情報基盤が脆弱性を突かれたことで、経営側の対応にも遅れが生じた。
無印通販再開で見えた連鎖の影響
アスクルのサイバー被害は関連サービスにも及び、無印良品の通販サイトにも影響が出た。無印はアスクル子会社のシステムを利用していたため、10月19日から閲覧と購入が停止されていたが、安全性確認後の12月1日に一部再開となった。大型家具など一部商品が注文可能となり、全面再開は12月中旬を予定している。被害の波及が小売業にも及んだ形で、システム依存の大きさが改めて示された。
