国内需要低迷が進む中の判断
コクヨは12月4日、ベトナムの文具メーカーであるティエン・ロン・グループ(TLG)を約276億円で取得する方針を発表した。2026年10〜11月にかけて株式公開買い付けなどを実施し、最大約65%を取得する計画である。国内市場では少子化やデジタル化が続き、筆記具の需要が伸び悩んでいることが背景にある。
ベトナム事業の拡大余地に注目
TLGはベトナムで筆記具販売に強みを持ち、2024年12月期に224億円の売上を記録した。同国には2つの工場があり、年間10億本以上を生産できる体制を整えている。東南アジア全体への供給能力も備えており、同地域における販売網はコクヨの既存事業と補完関係を形成する。
海外比率向上へ具体策を推進
コクヨは海外展開の拡大を中期的な重点としており、海外売上比率を2030年までに25%以上へ高める目標を掲げている。さらに文具事業全体でも2027年度に40%まで引き上げる計画が示され、海外企業の買収はその中心に位置付けられる。今回の交易は、既存の中国やインドに続く市場確保につながる。
事業領域拡張を見据えた資本投入
今回のTLG買収は同社にとって過去最大規模の取り組みとなる。傘下化により、TLGの生産能力や販売基盤を吸収し、アジア域内での競争力強化が期待される。国内市場の縮小を補うため、収益源の多様化が急務となる中、買収による事業拡張は戦略上の重要性を増している。
新たな収益軸形成を見据えた展開
コクヨは今回の買収を契機に、東南アジアを第4の事業基盤に据える方針だ。ノートや筆記具の需要が見込まれる市場でのプレゼンスを高め、事業全体の安定化を図る構想である。市場構造が変化する中、地域分散による持続的な収益確保が企業戦略の中心となりつつある。
