物価指標の上昇傾向を踏まえた対応が浮上
日本銀行は、7月末に予定される金融政策決定会合において、2025年度の物価見通しを上方修正する方向で調整を進めている。主因は、コメや加工食品を中心とした価格上昇が想定を上回っており、消費者物価指数(CPI)が5月時点の見通しより高い水準で推移している点にある。関係者によると、物価の動きが予測を超えたため、これを反映させる必要があるとの認識が共有されている。
コア・コアCPIが見通しを上回る水準で推移
5月時点で示されたコアCPIおよびコアコアCPIの予測値は、それぞれ2.2%と2.3%だった。しかし、最近のデータでは両指標がそれを上回る推移を示しており、従来の予測を据え置くには無理があるとされる。物価上昇圧力が根強い中で、金融当局はより現実的な物価見通しを示す必要に迫られている。
関税の影響が依然として見通せず
一方で、米国による日本製品への関税率の引き上げ問題が、経済全体の先行き不透明感を高めている。トランプ大統領は8月1日から関税を25%に引き上げる方針を発表しているが、日本側との交渉は未決着のままである。これにより、企業収益や来年度の春闘での賃上げ水準への影響が懸念されている。
今回は26年度見通しの大幅変更は回避か
5月時点の展望では、トランプ関税が経済に下押し圧力をもたらすとの観点から、2026年度のコアコアCPI見通しを1.8%に引き下げた経緯がある。今回の会合では、その見通しを据え置く可能性が高いとされており、情勢を注視したうえでの慎重な判断が求められる状況である。
交渉結果次第で次回以降の政策に波及も
8月1日に設定された関税発動の最終期限までに合意に至らなかった場合、日銀が設定した前提条件が崩れる可能性が出てくる。これにより、秋以降の金融政策や物価見通しにもさらなる調整が加わる可能性がある。現在は短期的な物価上昇と中長期的な経済への懸念が併存する、難しい舵取りが続いている。