偽造免許証による詐欺被害が頻発している背景
金融庁は、銀行がオンラインや郵送で口座開設を行う際に運転免許証の画像を用いて行う本人確認手続きを早期に廃止するよう求めた。背景には、近年多発する特殊詐欺や成り済ましによる預金口座の不正開設と悪用がある。免許証画像は偽造や流用が比較的容易で、本人確認手段としての安全性に限界があるとされている。
2027年施行予定の法改正を前倒しで適用へ
犯収法の2024年改正により、2027年4月以降は運転免許証画像での本人確認が基本的に認められなくなるが、金融庁はこの時期を待たず、より早い段階での制度見直しを要請している。16日に出された文書では、「可能な限り早期の対応」が強調された。
マイナンバーカードの活用を制度面で後押し
新たな本人確認手段として、マイナンバーカードのICチップを読み取る仕組みの導入が求められている。ICチップには顔写真や署名用電子証明書が記録されており、運転免許証画像に比べて偽造が困難で成り済まし対策として有効とされている。金融庁はシステム導入に必要な時間やコストを見越し、早期準備を促す意図がある。
銀行以外の事業者にも波及する影響
今回の要請は銀行だけにとどまらない。犯収法の「特定事業者」には、証券会社、クレジットカード会社、貸金業者なども含まれており、金融庁は今後こうした業界にも順次対応を求める方針だ。本人確認の厳格化は金融インフラ全体の信頼性向上にも直結するため、広範な波及が見込まれる。
デジタル化と本人確認の両立が課題に
従来、口座開設は店舗で行われ、窓口で職員が本人確認を実施していたが、近年のデジタル化により非対面での手続きが主流になってきた。この流れの中で、いかに安全かつ迅速に本人確認を実現するかが業界の共通課題となっている。新制度への円滑な移行が、金融サービスの利便性と安全性の両立に向けた鍵を握る。