英高等法院が訴えを退ける判決を発表
英国ロンドンの高等法院は2025年10月15日、スイスの金融機関クレディ・スイス(現UBS傘下)がソフトバンクグループ(SBG)に対して提起していた訴訟で、原告側の請求を棄却した。訴訟は、2021年に破綻した英グリーンシル・キャピタルをめぐる損失補填を求めるもので、クレディ・スイスはSBGに対して4億4,000万ドル(約660億円)の賠償を請求していた。
グリーンシル破綻が訴訟の発端に
グリーンシルは企業間の債権を証券化する金融サービスを手がけ、クレディ・スイスはその関連ファンドを通じて投資家資金を運用していた。しかし2021年3月にグリーンシルが経営破綻し、投資金の多くが回収不能となった。クレディ・スイスはSBGがグリーンシルへの出資や取引を通じて損失に関与したと主張していた。
UBSが訴訟を引き継ぎ審理継続
2023年、経営難に陥ったクレディ・スイスは同業のUBSによる救済買収を受けた。これによりUBSが訴訟を引き継ぎ、SBGに対して法的責任を問う手続きを継続していた。しかし高等法院は、SBGの不正行為を裏付ける根拠が十分でないと判断し、訴えの棄却を決定した。
ソフトバンク「正当性が明確に示された」
判決後、ソフトバンクグループは声明を発表し、「当社は一貫して誠実に行動しており、今回の判決によって事実関係が正しく示された」とコメントした。これに対しUBSは、「判決内容を精査し、今後の対応を検討している」と述べ、関係者の利益を守るために適切な措置を取る意向を示した。
巨額訴訟の帰結が示す企業間リスク管理の課題
今回の判決により、SBGは巨額の賠償請求を免れる結果となった。一方、クレディ・スイスに端を発する一連の混乱は、国際金融市場におけるリスク管理の重要性を浮き彫りにした。金融機関が複雑なサプライチェーン金融に関与する際の監督体制の不備が、改めて問われることになった。
