年収基準の再設定に関する検討状況が判明
自民党税制調査会は11月20日、2026年度税制改正に向けた検討を本格化させた。会合では、所得税が発生し始める水準として設定されている「年収の壁」を再び引き上げるための制度設計が重要な議題として位置付けられた。現在の基準は前年度改正で103万円から160万円に変更されたが、新たな経済環境への対応が求められている。今後は基礎控除と物価動向の関連性が焦点となり、改定幅を判断するための要素として扱われる見通しだ。与党内には複数の意見があり、最終的な水準の確定にはさらに時間を要する。
暫定税率撤廃に伴う財源確保の行方が議題に
ガソリン税に加算されている暫定的な税率の扱いも議題に含まれた。これを廃止した際に発生する財源不足への対応が大きな論点となり、与野党6党の枠組みでは25年末までに方針を固めることで一致している。候補として挙がっているのは、法人税に関する租税特別措置の見直しで、研究開発支援や賃上げ促進に関係する制度が検討対象となる。しかし産業界の抵抗が見込まれ、協議が容易に進むとは言い難い。自民党と日本維新の会の連立合意にもこの方向が記されており、今後も議論が続けられる見通しだ。
自動車税制の見直しが経済構造の変化に影響
自動車の取得時や保有時に課される「車体課税」についても議論が始まった。数年に一度の大規模な見直しの年に当たることから、電気自動車(EV)を取り巻く課税の枠組みが検討対象となる。従来の内燃機関車との負担差や保有時課税の公平性が課題となり、環境政策との整合性も求められる。市場の構造変化が加速する中で、課税体系の最適化は避けられないテーマとなっている。
税制協議の進展が与野党協力の姿勢に与える影響
現在の政権は少数与党であるため、税制改正の実現には野党との協力が不可欠となる。自民党は国民民主党や公明党との間で引き上げ目標を巡って過去に合意した経緯があるが、各党の主張には違いが残っている。例えば消費者物価を基準とした改定を支持する立場に対し、最低賃金の上昇率を参照すべきだとする意見も存在する。小野寺税調会長は、多くの政党と意見交換を行う姿勢を示し、幅広い支持獲得を意識した調整を進める考えを示した。
年末の税制大綱策定に向けた作業状況が見えてきた
税制改正の大綱は年末までに取りまとめられる予定であり、同日には日本維新の会も税調総会を開催する見通しだ。今回が高市政権発足後初めての税制改正となることから、政権の政策方向を象徴する重要な文書となる。国内投資を促進するための税制創設にも関心が向けられており、必要となる減収分の補填方法が課題に挙げられている。複数の論点が並行して動く中、調整作業は年末に向けて一段と加速する。
