財源不足を補うための新活用策が浮上
農林水産省は、農地集約や生産体制の再構築に必要な財源を確保するため、日本中央競馬会が積み立ててきた資金の一部を政策に組み込む方針を示した。政府は農業の再編を加速させる期間を定めており、その実現には大規模な資金投入が不可欠となる。こうした背景から、競馬事業由来の資金を農業基盤の強化に転用する検討が進められている。
特例措置としての積立金活用
今回の方針では、JRAが競馬事業で得た収益から国へ納めた後に積み立てている資金を、2029年度までの特例として農業政策に利用する案が示された。JRAは法に基づき、売り上げから一定割合を国に納付してきたが、積立金を追加納付させる形で農業財源に組み入れる構想が具体化しつつある。積立金の具体的な使用額は調整段階にあり、制度としての透明性や適切な配分が求められる。
農業政策が必要とする広範な費用
政府が定めた構造転換期間では、農地の大規模化や経営体制の再編成に加えて、先端技術の導入が柱となっている。人工知能やドローンを利用したスマート技術の普及、輸出拡大に向けた物流整備など、多岐にわたる事業が予定されている。これらの施策は中長期的な農業収益の底上げにつながるとされるが、予算規模が大きく、既存の枠組みだけでは対応が難しいと判断されている。
競馬収益の増加が政策判断を後押し
JRAの収益は継続的な増加傾向にあり、2024年は3兆3428億円と前年比1.4%の増加を記録した。インターネットを介した購入が定着したことで、利用者層が広がり、売り上げは長期的に安定している。この安定性が農業政策の財源としての利用を後押しし、従来の用途に加え、農業再編への活用が検討される背景となった。
法案提出に向けた詰めの協議
農林水産省は2026年の通常国会提出を視野に、制度の詳細設計に入っている。積立金の取り扱い方法や追加納付の条件、財源配分の基準などを整理し、適切な運用方法を確立する必要がある。農業収益力の強化や食料供給体制の安定化に向け、競馬収益をどのように活用するかが焦点となり、今後の議論が続く見通しだ。
