官民ファンド「INCJ」が15年の歴史に幕
政府と民間が共同出資する官民ファンド「INCJ(旧・産業革新機構)」が2025年3月31日をもって活動を終了した。2009年の設立以来、半導体や液晶ディスプレイなど日本の基幹産業の支援を目的に運営されてきたが、経営不振が続く企業もあり、その成果と課題が注目されている。
1兆2,900億円を投資、収支はプラスに
INCJはこれまでに144件の投資案件を手掛け、総額1兆2,900億円を投じてきた。支援対象には、液晶メーカー「ジャパンディスプレイ」、半導体メーカー「ルネサスエレクトロニクス」、有機ELパネルメーカー「JOLED」などが含まれる。一方、2024年3月末時点で投資回収額は2兆2,490億円に達し、最終的な収支はプラスとなる見込みだ。
事業再生の成果と未解決の課題
INCJの支援により、ルネサスエレクトロニクスは事業再編を経て業績を改善し、成長軌道に乗ることができた。しかし、ジャパンディスプレイは依然として経営難に直面し、JOLEDは2023年に民事再生法を申請するなど、すべての企業が成功したわけではない。官民ファンドによる産業支援の有効性を問う声も上がっている。
INCJの功績と今後の産業支援の行方
INCJの志賀俊之会長は、「ベンチャー企業の成長を後押しし、事業再編や統合を通じて産業の発展に貢献できた」と成果を強調する一方、「多くの課題も見えた」と振り返る。政府は今後、新たな官民ファンドの設立や支援のあり方を検討する可能性がある。
官民ファンドの役割が問われる時代へ
INCJの活動終了は、日本の産業政策にとって一つの転換点となる。官民ファンドの役割や投資判断の適切性が今後も議論されることは必至であり、政府と民間の連携のあり方が改めて問われることになりそうだ。