改正の背景と制度変更の全体像が判明
厚生労働省は2027年1月から、個人型確定拠出年金「iDeCo」の掛け金上限を引き上げるとともに、加入可能年齢を69歳以下まで広げる方針を示した。従来は働き方に応じて59歳や64歳が上限とされていたが、一律で69歳とすることで高齢期の就労者も利用しやすくする。高齢化が進む中での資産形成支援強化が背景にある。
会社員の掛け金枠拡大が発表
企業年金に加入している会社員は、企業年金と合わせた掛け金上限が現行の月5万5000円から月6万2000円へと7000円引き上げられる。また、これまで2万円に制限されていたiDeCo分の上限は撤廃される。企業年金がない会社員に関しても大幅な見直しが行われ、現行の月2万3000円から月6万2000円まで拡大される。
自営業者と個人事業主の条件変更が決定
自営業者や個人事業主の場合、国民年金基金との合計で拠出できる金額がこれまでの月6万8000円から7万5000円へと増額される。事業収入に依存する層の老後資金確保を支えるため、掛け金の幅を広げる形となった。制度改正により、職種や働き方にかかわらず幅広い層が利用しやすくなる。
高齢者就労の増加を踏まえた見直しの影響
近年は定年延長や再雇用制度の普及により、60歳を超えて働き続ける人が増えている。今回の加入年齢拡大は、そうした高齢就労者に対しても年金上乗せの選択肢を確保する狙いがある。老後の生活資金を安定させると同時に、社会保障制度全体の持続可能性を高める意図も読み取れる。
今後の実施に向けた課題と見通し
制度改正は2027年1月に施行される見込みだが、周知や運用の整備には時間を要する。金融機関や企業年金の管理機関では新制度に対応した手続きやシステム変更が求められる。加入者にとっては、拠出可能額の増加によって資産運用の自由度が広がる一方、運用リスクを伴うことも意識する必要がある。
