社会保障制度に変化 新年度からの生活への影響とは
2025年4月1日から、年金や医療保険などの社会保障制度にさまざまな変更が適用された。年金の支給額は名目上引き上げられるが、実際には実質的な価値が低下する形となる。加えて、高齢者の保険料負担も拡大するなど、多くの国民に影響を与える制度改定が行われている。
年金支給額は1.9%増も実質価値は下落へ
新年度より、公的年金の支給額は前年度比で1.9%引き上げられた。この改定は物価や名目賃金の変動を基に毎年度実施されるものだが、今回は「マクロ経済スライド」の適用により、賃金上昇率よりも低い水準に抑えられた。これにより、表面的な支給額の増加とは裏腹に、年金の実質的な購買力は低下している。
将来の年金財政を維持することを目的とするこの仕組みは、受給者にとっては実質的な生活水準の低下を意味する。現役世代の負担軽減と年金制度の持続可能性が求められる一方で、高齢者の家計に与える影響も無視できない。
国民年金保険料が月額17,510円に引き上げられる
公的年金制度における保険料にも改定があり、国民年金の保険料は月額530円増加し、17,510円となった。この改定は全加入者に影響するため、特にフリーランスや自営業者などにとっては負担が増す形となる。
また、就労中の65歳以上の高齢者が対象となる「在職老齢年金」制度にも変更が加えられた。支給額の減額基準となる賃金が、月額50万円から51万円に引き上げられ、一定の収入を得ながら年金を受給する高齢者の一部には恩恵となる可能性がある。
高所得の75歳以上に保険料増 加入者への影響広がる
医療保険制度では、75歳以上の高齢者に対する保険料負担が拡大された。2024年度には年間の年金収入が211万円を超える人が対象とされたが、2025年度からは153万円以上211万円以下の層も新たに負担増の対象となる。
さらに、年間保険料の上限額は73万円から80万円に引き上げられ、1人あたりの平均負担額は年間約1,300円の増加とされている。この変更は、急速な高齢化によって現役世代の保険料負担が膨らむのを防ぐことを目的とし、出産育児一時金の財源としても一部が活用される見込みだ。
社会保障制度の持続へ 現役と高齢者双方に課題
今回の一連の制度改定は、日本の社会保障制度を持続可能にするための措置として実施された。少子高齢化の進行により、現役世代と高齢者の間での負担の在り方が大きく問われている。
高齢者にとっては支給額の実質的な目減りや保険料の負担増が生活に影響する一方で、現役世代の負担増も限界を迎えている。制度の信頼性と公平性を維持しつつ、次世代への負担を抑えるには、今後も継続的な見直しと柔軟な制度設計が求められる。