国家安全保障を理由に50%の関税を決定
トランプ米大統領は、2025年8月1日付で銅の輸入に対する50%の関税措置を実施する方針を明らかにした。この判断は、通商拡大法232条に基づく国家安全保障調査の結果を踏まえたもので、銅が重要戦略資源に該当すると認定されたことが背景にある。商務省からはこの結論を支持する厳密な分析報告が提出されている。
銅の重要性と対象分野の広がり
今回の関税措置が注目される理由は、銅の使用分野の広がりにある。大統領はSNSで、銅が半導体、データセンター、航空機、船舶、レーダーシステム、ミサイル防衛、極超音速兵器などの製造に欠かせない素材だと指摘。さらにリチウムイオン電池や弾薬といった分野でも不可欠な存在であることを強調した。これにより、安全保障だけでなくハイテク産業全体に直結する戦略的物資としての位置づけが鮮明になった。
米国の銅輸入依存と主な供給国
米国は銅需要の約半分を輸入に頼っており、2024年には81万トンを海外から調達している。その主要供給国としてはチリ、カナダ、メキシコが挙げられ、今回の関税がこれらの国々に大きな影響を及ぼす可能性がある。中でもチリは世界有数の銅生産国であり、輸出の約半分がアメリカ向けであるとの見方もある。
製造業の国内回帰を掲げる政策の一環
今回の発表は、トランプ政権が一貫して掲げてきた「製造業の国内回帰」政策の延長線上にある。これまでにも、鉄鋼、自動車、木材、医薬品、半導体といった分野で類似の措置が取られており、対象分野を拡大させることで、国内の産業基盤を再構築する狙いがあるとされる。ラトニック商務長官も、「生産を国内に取り戻すことが最優先事項」と述べている。
政治的アピールと経済への波及効果
トランプ氏は、自身の政策を「米国再建のための道筋」として強調し、今回の関税措置によって「再び支配的な銅産業を築く」と宣言した。これは選挙戦を見据えた支持層へのアピールとも捉えられ、保守層や製造業従事者の関心を引き寄せる狙いもある。ただし、銅価格の高騰や下流産業へのコスト転嫁といった波及効果も予想されており、今後の国内市場への影響にも注目が集まっている。