暫定税率廃止を見据えた移行措置が始動
政府は11月13日から、ガソリンと軽油に対する補助金を段階的に引き上げる。ガソリン税などの暫定税率を年末から廃止する方針に伴い、価格変動による混乱を避けるための移行措置として実施されるものだ。現在、石油元売り業者に対して1リットルあたり10円を支給している補助金を、13日から15円に引き上げる。これにより、価格下落を段階的に誘導する。
財源は燃料油基金、計8000億円を活用
今回の補助金増額には、「燃料油価格激変緩和対策基金」に残る約8000億円が活用される。政府は段階的な補助強化により、消費者が一度に大幅な価格変動を受けないよう配慮する方針を示している。補助金は今後2週間ごとにおよそ5円ずつ追加され、12月11日にはガソリン25.1円、軽油17.1円と、暫定税率に相当する水準まで引き上げられる見通しだ。
小売価格への反映は数日から1週間後
経済産業省が発表した調査によると、11月10日時点のレギュラーガソリンの全国平均小売価格は1リットルあたり173.5円だった。補助金引き上げ後、価格は数日から1週間ほどで反映され、13日以降には5円程度の下落が見込まれている。年末には160円前後の水準となる可能性もある。中小のガソリンスタンドでは、補助金が反映される前に値下げを迫られるケースも想定され、資金繰り支援が検討されている。
年末から段階的に税廃止、家計負担軽減へ
政府はガソリン税の暫定税率を12月31日に、軽油引取税の暫定税率を2026年4月1日にそれぞれ廃止する予定だ。これにより、燃料価格の構造的な引き下げが進み、物価高の抑制と家計負担の軽減が期待されている。ガソリン補助制度は2022年1月に開始され、これまでに総額7兆円を超える予算が投入されてきた。
価格安定と供給維持の両立が課題に
一方で、補助金による市場依存が続けば、原油相場の変動リスクや財政負担の拡大が懸念される。政府は価格安定を維持しつつ、円滑な暫定税率廃止を実現するため、需要動向と原油市場の推移を注視している。年末にかけての価格動向は、今後のエネルギー政策を占う試金石となりそうだ。
