軍事的圧力が強まる台湾周辺の動向
中国人民解放軍東部戦区は2025年4月1日、台湾本島周辺の北・南・東の3方向において、陸・海・空・ロケット軍を動員した大規模な合同軍事演習を実施した。この演習は、中国政府が「台湾独立を目指す勢力への厳重な警告」と位置づけ、「国家の主権と領土の統一を守る正当な行動」と説明している。演習は一部、西太平洋にまで広がっており、地域全体の緊張感が高まっている。
空母「山東」を中心とした実戦想定訓練が展開
今回の演習には空母「山東」を含む艦隊や複数の航空機が動員され、対空迎撃や対地・対艦攻撃、海上封鎖のシナリオに基づいた訓練が行われた。また、ロケット軍も参加し、長距離攻撃の精度を検証した。中国海警局もパトロール活動を実施し、台湾本島を取り囲むような形で海警船による臨検や拿捕の訓練を実施したことが報告されている。
台湾国防部、中国の軍事行動を厳しく批判
台湾国防部は同日午後に緊急記者会見を行い、当日朝以降に延べ71機の中国軍機の活動を確認したと発表した。そのうち36機は中台間の事実上の境界線である中間線を越えて台湾側に進入。さらに、13隻の艦艇および4隻の海警船の航行も確認されている。台湾側はこれらの行動を「地域の安定を損なうものであり、国際秩序に対する重大な挑戦」と強く非難した。
軍事演習の背景に頼清徳総統の発言が影響
中国側の軍事的対応は、台湾の頼清徳総統が2025年3月に行った「中国は敵対勢力」との発言に強く反応したものとされる。中国軍は2024年にも2度、台湾を包囲する形での大規模演習「連合利剣」を展開しており、今回の演習はその延長線上に位置づけられる。中国は今後も政治的発言に対し、軍事力を背景とした圧力を強化する姿勢を崩していない。
地域の安全保障環境に与える深刻な影響
台湾海峡を中心にした軍事的緊張の高まりは、アジア太平洋地域全体の安全保障環境に重大な影響を及ぼす可能性がある。空母を含む実戦型演習の継続や海警の法執行訓練は、軍事衝突のリスクを高める要因となっており、周辺国や国際社会からの注視が続いている。今後の情勢変化と各国の対応が、地域の安定を左右する重要な要素となるだろう。