トランプ氏の強硬姿勢がカナダ政府の決断に影響
カナダは、米国の主要テクノロジー企業に課税するはずだったデジタルサービス税を、開始前日に断念した。27日、トランプ氏がSNS上でこの課税を厳しく糾弾し、関税強化と貿易協議の打ち切りを示唆したため、カナダ政府は29日に税制導入の撤回を決定した。
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デジタルサービス税の内容と背景が明らかに
撤回されたDSTは、アマゾンやアップル、グーグル、メタといったアメリカ企業がカナダ国内で得る年間2,000万カナダドル超のデジタル収入に対し、3%を課税する制度だった。これは2020年に導入が発表されていたもので、カナダ国内での収益に比して納税が行われていない状況を是正するために設計されていた。
経済依存関係が外交判断に影響を及ぼす構図
アメリカはカナダにとって最大の貿易相手国であり、カナダの輸出の約76%、年間4,000億米ドル以上がアメリカ向けである。一方、アメリカの輸出先としてのカナダの比率は約17%に過ぎない。この非対称的な経済依存が、カナダ政府の譲歩の背景にあると見られている。
カナダ新政権と米国の関係修復の動きが進展
カナダでは、中央銀行総裁を歴任したマーク・カーニー首相が新たに政権を担っており、対米関係の修復が主要課題とされている。両国は7月21日までに新たな貿易枠組みの合意を目指しており、今回の措置はその布石と位置付けられる。
米国企業の課税回避問題は国際課題に発展
デジタル大手の税負担軽減は、企業構造による合法的な措置であるが、世界中で批判の的となっている。イギリスをはじめ複数国が独自課税を検討する一方、カナダは多国間合意の必要性を訴えており、今後は経済協力開発機構(OECD)などの場で議論が進められる可能性がある。