厳格化の背景に制度悪用の指摘が浮上
政府は外国人の起業を支える「経営・管理ビザ」について、不正利用が目立つ状況を受け要件を大幅に見直す方針を打ち出した。ペーパーカンパニーを設立して不正に在留資格を得るケースが増加し、国会でも「制度の抜け穴」との批判が相次いでいた。入管庁によると、2024年の在留者は約4万1000人に達し、5年前から5割増加していた。
資本金要件を大幅引き上げへ
これまで資本金500万円以上または2人以上の常勤職員の雇用で取得可能だったが、今後は3000万円以上の資本金と1人以上の雇用を同時に満たすことが必須となる。現行の基準と比べて6倍の水準となり、国内での企業設立ハードルは大きく上がる。韓国や米国など諸外国に比べ緩いとされていた条件を国際水準に近づける狙いもある。
経営経験や学歴を新要件に追加
資本金以外の条件も強化される。申請者には「3年以上の経営・管理経験」または「経営に関する修士相当以上の学位」を求める方針だ。また、新規事業計画については公認会計士や中小企業診断士の確認を義務づけ、形式的な計画による申請を防ぐ仕組みが導入される。
在留資格更新時の扱いが焦点に
既にこのビザで在留している経営者についても、新たな基準に基づいた審査が行われる見込みだ。ただし入管庁は「新基準をすぐに満たせない場合でも、更新を一律で認めないのは妥当でない」とし、柔軟な対応を取ると説明している。新要件の適用範囲や更新審査の厳格さが、今後の大きな論点となる。
起業環境への影響懸念が広がる
制度改正により不正防止は期待されるものの、正規の外国人起業家にとって参入障壁が高まる可能性も否定できない。有識者からは「真剣に起業を目指す人を排除しかねない」との懸念が示されている。外国人起業家による新たな産業創出や経済の多様化をどのように維持するか、制度運用のバランスが問われている。