防衛政策見直しへ自民調査会が提言案を了承
自民党安全保障調査会は5月25日、党本部で全体会合を開き、国家安全保障戦略など安全保障関連3文書の改定に向けた政府への提言案を了承した。安保3文書は年内の改定が予定されており、今回の提言案は党として政府に示す安全保障政策の方向性を整理したものとなる。
提言案では、従来型の装備整備だけではなく、戦闘のあり方が変化している現状への対応を重視した。無人機や長射程兵器、継戦能力の確保などを念頭に、防衛力の内容そのものを短期間で見直す必要があるとの認識を示した。
自民党は今後、党内の手続きを進めた上で、6月上旬にも政府に提出する方針である。政府側はこの提言を踏まえ、3文書改定に向けた検討を進めることになる。
新たな戦い方への対応を重視する内容
提言案は、「新しい戦い方」や長期的な防衛継続能力に対応するため、防衛力の抜本的な強化が必要だと位置づけた。現代の安全保障環境では、無人機やミサイル、サイバー領域など多様な手段が組み合わされるため、従来の装備体系だけでは対応が難しいとの問題意識が背景にある。
特に重視されたのは、装備と運用体制の双方を見直す点である。単に予算を増やすだけでなく、実際に防衛力として機能する仕組みを整えることが求められた。提言案は、必要な予算を確保しながら、5年以内に防衛力の変革を実現すべきだと明記した。
また、継戦能力については、少なくとも年単位で確保する必要があるとした。弾薬や部品、燃料などを含め、長期的な事態に耐えられる体制づくりが課題として示された。
無人機と国内量産基盤の整備を要請
提言案では、多様な無人機の導入を進めることも盛り込まれた。無人機は偵察、警戒、攻撃支援など幅広い任務で活用できるため、今後の防衛力整備の重要分野として扱われている。
同時に、国内で安定的に生産できる体制の構築も求めた。海外からの調達に依存した場合、有事や国際情勢の変化で供給が制約される可能性がある。提言案は、量産基盤を国内に持つことが防衛力の持続性につながるとの方向性を示した。
この点は、継戦能力の確保とも密接に関係している。装備を導入するだけでなく、補修や増産、部品供給を含む産業基盤の強化が必要となるためである。
防衛費の具体的な数値目標は見送り
防衛費をめぐっては、NATO加盟国や韓国、オーストラリアなどの例が提言案で示された。NATO加盟国などでは2035年までに国防費をGDP比3.5%へ引き上げる動きがあり、オーストラリアは3%を掲げている。
一方、日本の防衛費については、GDP比などの新たな数値目標を設定しなかった。現行の2%からさらに引き上げるかどうかは、財源確保の議論と密接に関わるため、提言案では具体的な割合を示さない形となった。
自民党側からは、防衛力を強化する必要性と財源論の難しさがあるとの説明があった。提言案は、数値を掲げるよりも、必要な防衛力と予算を主体的に判断する方向を示した。
非核三原則や原潜導入は明記されず
今回の提言案では、非核三原則の見直しには触れなかった。非核三原則のうち「持ち込ませず」を巡っては、有事における米国の核抑止力との関係が論点となっているが、提言案では直接扱わず、米国による核抑止を中心とした拡大抑止の信頼性を高めるとの表現にとどめた。
原子力潜水艦についても、導入を明記しなかった。提言案では、長射程ミサイルを運用する次世代動力の潜水艦を検討するとしたが、動力源として原子力を明示する内容にはしなかった。
自民党内では、これらのテーマについて、より高次の議論が必要だとの説明があった。提言案は、争点となる項目を限定的に扱いながら、防衛力変革と予算確保を中心に政府への要請をまとめた形となった。
