消費者被害防止を重視した処分
EUの欧州委員会は5月28日、中国系ネット通販サイト「Temu」について、デジタルサービス法に違反したとして2億ユーロの制裁金を科した。金額は日本円で約370億円に相当する。サイト内で違法商品が販売されるリスクへの対応が不十分だったことが、処分の主な理由とされた。
欧州委員会は、2024年10月以降に調査を進め、Temuの対応を検証した。その結果、サイト上で販売される違法商品の危険性や、EU域内の消費者に与える被害を十分に把握していなかったと判断した。ECサービスの拡大に伴い、利用者保護をめぐる事業者責任が改めて問われる形となった。
自社サイトの実態把握に不足
欧州委員会は、Temuが実施したリスク評価について、自社サービスの実態を十分に反映していなかったと指摘した。評価内容はEC業界全般に関する一般的な説明に偏り、Temu上で実際に起きる違法商品の販売リスクを十分に分析していなかったとされる。利用者が危険な商品に接する可能性についても、実態より低く見積もったと認定された。
問題視されたのは、出品商品の管理だけではない。商品を利用者に勧める機能や、インフルエンサーを通じた宣伝が、違法商品の拡散を助長する可能性も評価対象となった。欧州委員会は、販売経路だけでなく、表示や宣伝の仕組みを含めた総合的なリスク管理を求めている。
充電器や乳幼児用品に問題
調査では、Temuで販売されていた商品に安全面の不備が確認された。欧州委員会の覆面調査では、多くの充電器が基本的な安全基準に適合していなかった。消費者が日常的に使用する商品であるため、基準を満たさない製品の流通は重大な問題とされた。
乳幼児向け商品についても懸念が示された。一部の玩具では、法定基準を超える化学物質が検出されたほか、赤ちゃん用のおもちゃで窒息の危険がある例も指摘された。欧州委員会は、こうした商品の存在により、消費者が違法商品を購入する可能性が非常に高くなったと説明している。
デジタルサービス法の運用が本格化
EUのデジタルサービス法は、大規模なネットサービスに対し、違法な商品やコンテンツへの対応、利用者保護、リスク管理を求める法律である。巨大IT企業やEC事業者には、事業規模に見合った厳しい管理体制が義務付けられている。Temuへの今回の処分は、同法の運用が本格化していることを示す事例となった。
欧州委員会は、違法商品の排除だけでなく、リスクを事前に把握し、仕組みとして防止する体制を重視している。販売後の対応にとどまらず、商品の掲載、推薦、宣伝の段階から危険を抑えることが求められる。越境ECの利用が広がる中、EUは域内消費者を守るための監督を強化している。
改善計画提出後の対応が焦点
EUはTemuに対し、8月28日までに改善計画を提出するよう命じた。計画の内容が不十分な場合や、求められた対応に従わない場合、追加の制裁が科される可能性がある。欧州委員会は、Temuのリスク評価に根拠と網羅性が不足していたとして、具体的な改善を求めている。
一方、Temu側は欧州委員会の判断に反発した。報道官は、決定に同意できず、制裁金は過剰だと述べた。また、今回の判断は2024年時点の評価に基づくもので、現在の状況を反映していないと主張した。今後は、Temuが提出する改善計画と、それに対するEU側の評価が注目される。
