生成AI企業の上場準備が新たな段階に入る
米オープンAIが米国でのIPOを非公開で申請したことにより、生成AI企業の資金調達は新たな局面に入った。同社は対話型AI「チャットGPT」を手がけ、世界的な利用拡大を背景に企業価値を大きく伸ばしてきた。今回の申請は、非公開企業として成長してきた同社が公開市場に接近する動きとして位置付けられる。
会社側は、IPOの規模や条件、上場日程を明らかにしていない。声明では、上場までに時間がかかる可能性があるとの認識を示した。報道では、2026年10~12月期の上場を目指すとの見方も出ており、正式発表と市場環境の変化が今後の焦点となる。
チャットGPT利用拡大が企業価値を支える
オープンAIは、チャットGPTの週間アクティブユーザーが9億人超、有料の個人ユーザーが5000万人超に達したと説明している。生成AIの利用が個人、企業、開発分野に広がる中、同社のサービス基盤は急速に拡大した。利用者数の増加は、同社の成長期待を支える重要な要素となっている。
売上面でも成長が示されている。3月には月間売上高が20億ドルに達したと発表し、2024年末時点の四半期売上高が約10億ドルだったことと比べても、収益規模の拡大が鮮明となった。一方、事情に詳しい関係者によると、同社は直近の資金調達ラウンドで、2030年まで黒字化を見込めないと投資家に伝えていた。
インフラ整備が上場資金の使途として浮上
生成AIの競争では、モデル開発だけでなく、計算資源、半導体、データセンター、電力供給の確保が重要になっている。オープンAIのIPO資金は、AI開発や運用に必要なデータセンターと半導体関連の投資に使われるとみられている。サービス利用が拡大するほど、処理能力を支える基盤投資も増える構造である。
同社にはソフトバンクグループも出資している。さらに、発電所などのAIインフラ整備計画「スターゲート」構想も進めている。AIの高度化と普及が続く中、オープンAIの上場は、単なる資本市場の案件にとどまらず、AIインフラ整備の資金確保と直結する動きとなっている。
アンソロピックとスペースXも大型案件で先行
大型IPOをめぐる動きは、オープンAIだけに限られない。競合のアンソロピックは6月1日、米国でIPOを非公開で申請したと発表した。同社はコーディング支援ツール「クロード・コード」を手がけ、5月下旬には650億ドルを調達し、企業価値が9650億ドルに達したと明らかにしている。
宇宙開発企業スペースXも、米IPO市場で注目される大型案件である。報道では、同社が750億ドルの調達を目指し、企業価値が1兆7500億ドルに達する見通しとされている。オープンAI、アンソロピック、スペースXの上場観測が重なり、米国市場ではAIと先端技術を中心とする資金獲得競争が強まっている。
巨額IPOが米市場の資金配分を左右する
米IPO市場では、大型案件が新たな勢いを生む一方、資金の集中を招くとの見方もある。銀行関係者の間では、巨額の上場案件が相次ぐことで、中小規模のIPOに向かうはずの投資資金を吸収する可能性が指摘されている。公開市場での資金調達余力は、上場を目指す企業全体に影響する。
オープンAIは、営利企業化を批判していた共同創業者イーロン・マスク氏との訴訟で勝訴した。事業運営をめぐる課題を抱えながらも、同社は成長投資を支える資本基盤の拡充を進めている。生成AIの需要拡大、巨額インフラ投資、競合企業の上場準備が重なる中、オープンAIのIPOは米資本市場の重要案件として位置付けられる。
