WWDCで示されたAI戦略の転換点
米アップルは6月8日、年次開発者会議WWDCで、AIを取り入れて大幅に刷新した音声アシスタント「Siri AI」を発表した。利用者との対話をより自然にし、端末上の情報やアプリとの連携を強めることで、従来のSiriより高度な支援を提供する方針を示した。アップルは生成AI分野で競合企業に先行を許したとの見方を受けており、今回の発表は同社のAI戦略を改めて示す場となった。
新Siriが担う中核機能と端末連携
新しいSiriは、アップルのAI基盤「アップルインテリジェンス」の中心的な役割を担う。画面に表示された内容を読み取り、利用者の過去の操作やアプリとのやり取り、保存された画像、一般知識を組み合わせて応答する。何年も前に撮影した写真を探したり、受信トレイの中に埋もれたメールを見つけたりする機能も示された。対応端末を保有する利用者が対象となり、試用版は今年後半に英語で提供される予定だ。
プライバシーを軸にした差別化の方針
アップルは、AI機能の強化に際し、プライバシーを重視する姿勢を前面に出した。ソフトウェア・エンジニアリング担当のクレイグ・フェデリギ上級副社長は、利用者を中心に据えないAIの在り方に疑問を示し、真に役立つAIは利用者の必要に基づくべきだと説明した。新しいSiriの体験は、各段階でプライバシーを考慮して設計されたとされる。調査会社のアナリストは、アップルが統合と個人情報保護を重視する独自の方法で、日常利用の改善を示す必要があると指摘した。
子ども向け安全機能の拡充と背景
アップルは、iOS 27に関連する信頼性と安全性の取り組みも発表した。子どもが誰と会話できるかを保護者が管理する機能を拡張し、知らない相手とやり取りする前に保護者の承認を必要とする仕組みを導入する。また、性的または暴力的な内容を含む可能性がある画像が子どもの端末に送られた場合、自動的に制限する機能も盛り込む。アップルは子どもの安全対策が不十分だとして一部団体から批判を受けており、WWDC会場前でも抗議が行われた。
クック体制最終盤で示された課題
今回のWWDCは、9月に退任予定のティム・クックCEOにとって最後の基調講演となった。クック氏は2011年にスティーブ・ジョブズ氏の後任としてCEOに就任し、15年にわたりアップルを率いた。会場では開発者や社員が総立ちで迎え、クック氏は開発者と従業員への感謝を述べた。後任にはジョン・ターナス氏が就く予定だが、基調講演には登場しなかった。新Siriの発表は、AI競争への対応と経営体制の移行が重なる節目を示すものとなった。
