国内で途絶えたLNG船建造の再開へ
国内造船最大手の今治造船は、液化天然ガスを輸送するLNG運搬船の国内建造を再び始める方向で検討を進めている。檜垣幸人社長が7月23日に東京都内で記者会見し、政府から示された要請を踏まえ、複数の企業と協議していることを明らかにした。
日本国内におけるLNG運搬船の建造は、2019年を最後に途絶えている。今治造船には過去の建造実績があり、檜垣氏はエネルギー輸送に欠かせない船種として、再開に向けた検討を進める姿勢を示した。ただし、建造場所や事業形態などの具体的な内容は決まっていない。
政府が2035年以降の供給体制を提示
政府が7月21日に閣議決定した成長戦略には、LNG運搬船を国内で建造できる体制を復活させる方針が盛り込まれた。2035年以降に年間3~5隻を安定して造れる生産基盤の確立を目標としている。
LNGは日本のエネルギー供給を支える重要な燃料だが、輸送に使われる船舶の建造を海外企業に依存する状態が続いている。国内で建造能力を持つことは、船舶産業の競争力だけでなく、エネルギー輸送を支える基盤の維持にも関係する。政府は民間企業と連携し、造船所や関連企業の設備、人材、技術を再集結させる考えだ。
造船3社の協業と共同出資案が浮上
建造再開を巡っては、今治造船、川崎重工業、名村造船所の3社が協業を検討している。各社が持つ船舶設計や生産設備、建造技術を組み合わせ、単独企業では負担が大きい事業を共同で進める構想となる。
協力の方法として、3社などが資金を出し合う新会社の設立も選択肢に入っている。共同出資の枠組みを採用すれば、設備投資や技術開発に伴う負担を分担できる。一方、役割分担や建造拠点、受注方法を含む詳細については、今後の協議事項として残されている。
中韓勢との価格差と部品供給が課題
LNG運搬船の世界市場では、韓国企業が国別シェアの約8割を占め、中国企業も受注を伸ばしている。日本企業が市場へ戻るには、建造費用や納期、生産能力の面で中韓勢と競争できる体制を整えなければならない。
檜垣氏も海外勢との間に価格差が存在すると認め、競争力を高める方法について政府などと協議する方針を示した。LNG運搬船には特殊なタンクや多数の専用部品が必要となるため、長期間停止していた国内の部材供給網を組み直す作業も求められる。造船会社だけでなく、機器メーカーや素材企業を含む幅広い協力が不可欠となる。
建造量拡大へ国内造船基盤の再構築
政府は2035年の国内船舶建造量を1800万総トンとし、2024年の約2倍に引き上げる方針を掲げている。LNG運搬船の再開は、この生産拡大策を具体化する重要な事業の一つに位置付けられる。
計画の実現には、複数社による協業体制の確立に加え、設備、人員、部品調達を継続的に確保する仕組みが必要となる。今治造船を中心とする協議がまとまり、国内で年間3~5隻を建造する体制を築けるかが焦点となる。日本の造船業が大型特殊船の生産能力を取り戻す上でも、今後の企業間協議と政府支援の内容が問われる。
