原油の調達ルート分散を平時から維持へ
経済産業省は8月7日、原油などの安定供給を強化するため、ホルムズ海峡を通らない輸入を支援する新たな制度案を明らかにした。通常の輸送経路と比べて増加する運賃や船舶保険料などを対象に、一定の条件を満たした事業者へ交付金を支給する。中東情勢が落ち着いた後も複数の調達先や輸送経路を確保し、将来の供給途絶に備えることが目的となる。
日本は中東情勢が緊迫化する前、輸入原油の約9割を中東地域に依存し、その大部分をホルムズ海峡経由で運んでいた。海峡が事実上通過困難となった後は、国内備蓄の放出に加え、米国など別地域からの調達拡大によって必要量を確保してきた。
輸送費と保険料の追加負担を交付対象に
制度では、原油やナフサを輸入する石油元売り会社や商社などが、まず調達計画を国へ提出する。計画について経済性や供給先分散への効果などを確認し、国が認定した案件を支援対象とする仕組みが想定されている。
例えば、中東より遠い地域から原油を購入したことで輸送距離が伸び、運賃や保険料が増えた場合、その追加費用を交付金で補う。中東産原油であっても、ホルムズ海峡を通過しない積み出し港を利用することに伴って費用が増えたケースについては、支援対象に含める方向だ。
JOGMECが交付金を運用する枠組み
国の認定を受けた輸入計画を持つ事業者は、独立行政法人のエネルギー・金属鉱物資源機構に申請し、審査を経て交付金を受け取る。制度の運用主体を同機構とし、危機時だけでなく通常時にも調達先の分散を継続できる環境を整える。
経産省は7月下旬、石油などの供給体制を強化するため、有識者による作業部会を設置した。今回の制度案は8月7日に開かれた2回目の会合で提示されたもので、供給網を長期的に維持するための具体策として検討が進められている。
交付財源は原油輸入各社からの納付金
交付金に必要な資金は国費ではなく、原油などを扱う輸入事業者から集める納付金で確保する方針だ。ホルムズ海峡を避けて追加費用を負担する企業を、輸入業界全体で支える構造となる。
一方、事業者が負担する納付金が石油製品などの販売価格に反映されれば、最終的には消費者側の負担が増える。経産省も国民負担につながる点を認めており、危機発生時に集中するコストと平常時の費用負担をならす仕組みとして制度への理解を求めている。
将来の供給危機に備え制度設計を具体化へ
中東情勢の悪化を受けて調達先の分散が進んだ一方、情勢が安定すれば価格面で有利な従来の輸入経路に戻る動きが生じる可能性がある。経産省は、危機時に確保した海外の調達先や新たな輸送ルートを平時にも維持できる仕組みが必要と判断した。
制度案については8月22日まで意見を募集し、その後に大枠を固める。開始時期や支援条件などの詳細も今後詰める予定で、政府が8月末までに策定するエネルギー需給体制の強化に向けた総合計画でも、新制度に言及する見通しとなっている。
