物価上振れへの警戒強め利上げ継続方針を明確化
日銀の氷見野良三副総裁は8月27日、さいたま市で講演し、政策金利の引き上げを続けながら、金融緩和の度合いを調整していく考えを示した。日銀は6月に政策金利を1.0%へ引き上げたばかりだが、氷見野氏は現在の金融環境について、なお緩和的な状態が続いているとの認識を示した。追加利上げの具体的な時期には踏み込まなかった一方、これまで以上に物価上昇が想定を上回るリスクを意識する必要があると指摘した。9月17、18日の次回金融政策決定会合を控え、市場では追加利上げ観測が強まりつつある。
実質金利はマイナス圏、緩和的な金融環境続く
氷見野氏は、物価変動を考慮した実質金利の大部分がマイナス圏にあることを挙げ、日本の金融環境は引き締まった状態ではないと説明した。政策金利を引き上げた後も、実質ベースでみれば経済への金融面の支援効果が残っているとの見方だ。日銀は2%の物価安定目標を掲げ、足元の物価だけでなく、持続的な値上がりにつながる基調的な動きを重視して政策を運営している。氷見野氏は、経済・物価の見通しが実現する確度や上下双方のリスクを確かめながら、金利水準を調整する姿勢を示した。
原油高やAI需要、円安を物価上振れ要因として注視
物価を巡っては、中東情勢に伴う原油価格の上昇、AI関連需要の拡大、円安を含む為替変動が主な注視点として挙げられた。こうした要因が一時的な価格変動にとどまらず、基調的な物価上昇に波及する可能性を確認する必要があるとしている。氷見野氏は、基調的な物価上昇率が2%を超える方向へ進むリスクも政策判断に織り込む局面になっているとの認識を示した。一方、7月の展望リポート時点から経済・物価に対する基本的な見方が大きく変わったわけではないとも説明し、警戒姿勢の強まりは状況変化に応じたものと位置付けた。
官民投資への影響巡り金利機能の重要性を強調
利上げの継続については、高市早苗政権が進める官民の投資活動を弱めるとの見方もある。これに対し氷見野氏は、日本経済が供給制約を抱える状況にあるとした上で、限られた資源を効率性や戦略性の高い投資へ振り向けるには、金利を通じた資源配分の仕組みが働くことが重要だとの考えを示した。金融政策による金利調整は投資を一律に抑えるためではなく、より有望な分野へ資金が向かう環境を整える役割を持つとの立場だ。利上げと成長投資の関係について、金融政策の機能面から説明した形となった。
次回会合を前に経済と物価の点検を継続する方針
氷見野氏は記者会見で、今後の利上げのペースや時期について、経済・物価の中心的な見通しが実現する可能性とリスクを点検して判断すると説明した。市場で9月利上げの織り込みが進んでいることには直接答えず、特定の会合で何を決めるかを事前に示すことは適切でないとの立場を取った。4〜6月期の実質GDPでは内需に弱さがみられたが、経済全体の評価を変更する必要はないとしている。植田和男総裁が米国で27日から開かれる経済シンポジウムを欠席するため、今回の発言は次回会合前に執行部の考えを示す重要な機会となった。日銀は利上げの方向性を維持しながら、物価上振れリスクと景気の双方を確認して政策判断を進める。
