仏トタルが北極圏LNG事業の権益譲渡を正式完了
フランスのエネルギー大手トタルエナジーズは8月27日、ロシア北極圏で進められている液化天然ガス開発「アークティックLNG2」の持ち分10%を手放す手続きを終えた。譲渡先はロシアの天然ガス大手ノバテクの子会社となる。同事業はヤマロ・ネネツ自治管区で開発が進められており、今回の取引によって出資企業の構成が改められた。
トタルはロシアによるウクライナ侵攻を受け、すでに事業への新たな資金投入を停止していた。今回の権益移転は、そうした方針の延長線上で実施された形となる。
ノバテク側の保有比率は70%まで拡大する形に
トタルが持っていた10%分を取得したことで、アークティックLNG2に対するノバテク側の持ち分は合計70%となった。事業の大部分をロシア側が保有する構成へと変わったことになる。
残る30%については、日本のエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と三井物産が共同で10%を所有する。このほか、中国海洋石油(CNOOC)と中国石油天然ガス集団(CNPC)がそれぞれ10%を持つ。フランス企業の離脱後も、日本と中国の企業・機関は出資者として残る構図となった。
ウクライナ侵攻後に追加出資を停止したトタル
トタルがアークティックLNG2への対応を見直したのは、2022年2月にロシアがウクライナへの侵攻を開始したことが背景にある。同社は翌3月、同プロジェクトにこれ以上資金を投じない方針を決めた。その後も保有していた10%の権益について、今回正式に移転が完了した。
ロシアのプーチン大統領は2026年6月、ノバテク子会社がトタルの持ち分を買い取ることを認める大統領令に署名していた。今回の発表によって、その手続きが完了したことが明らかになった。
日本と中国の企業連合は引き続き権益を保有
トタルが事業から持ち分を移す一方、日本と中国の出資分に変更は示されていない。日本勢ではJOGMECと三井物産が共同で10%を保有し、中国勢ではCNOOCとCNPCが各10%を持つ。
アークティックLNG2を巡る動きは、ロシア産LNGを取り巻く輸出環境の変化とも重なる。EUは対ロシア制裁の一環として、2027年初めからロシア産LNGの輸入を全面的に禁止する方針を示している。ロシア側にとって欧州市場への販売が難しくなる中、アジア市場への輸出拡大が重要になっている。
ロシア北極圏LNG事業で再編の動きが一段と進行
ただ、アジアへの販売転換には輸送面の負担が伴う。ヤマル半島から欧州までのLNG輸送は約17~20日なのに対し、アジア向けはスエズ運河経由で50~60日、喜望峰経由では70~80日を要する。北極海航路を利用した場合でも50~65日とされ、業界関係者らは物流費が少なくとも2倍になるとみている。
欧州での需要先縮小とアジア向け輸送の長期化が同時に進む中、ロシアのLNG事業では収益環境の変化と出資構成の組み替えが進んでいる。トタルによる10%の権益移転は、アークティックLNG2を巡るこうした変化を示す新たな動きとなった。
