被害者79人がネット証券4社へ調停申し立て
証券口座への不正アクセスによって保有株式などを本人の意思に反して売買された個人投資家79人が8月27日、ネット証券4社を相手に東京簡易裁判所へ集団調停を申し立てた。対象となったのはSBI証券、マネックス証券、楽天証券、松井証券で、申立人は全国の40代から80代の男女で構成される。被害者側は、無断で処分された有価証券を取り戻し、口座を被害発生前の状態に戻すことなどを求めている。
無断売却後に身に覚えのない取引が繰り返される
申立書などによると、79人は去年10月までの1年間に、保有していた株式などを本人の承諾なく売却された。その後、本人が注文していない取引が口座内で繰り返されたという。証券口座のIDやパスワードなどが第三者に取得され、不正なアクセスを通じて売買に利用される被害は、2025年春ごろから急増していた。
被害者の1人である78歳の男性は、約3000万円で取得した株式を失ったとしている。被害者側は、自らに落ち度がないにもかかわらず補償が限定されることに納得できないとして、証券会社側の対応を問題視している。
半額補償ではなく全額回復を求める申立人側
ネット証券各社は顧客への補償について、被害額の半額を基本とする対応を示している。一方、今回の申立人側は金銭による一部補償だけではなく、乗っ取り前の口座状況に戻す原状回復を要求した。被害者の会の堤昭仁さんは、証券会社のセキュリティー対策が十分ではなかったとして責任を求め、口座を元の状態に戻してほしいと訴えた。
今回の調停では、不正取引によって失われた資産をどの範囲まで証券会社が負担するかが争点となる。申立人側は、被害者に過失がないとの立場から全額補償を求めている。
不正アクセス1万9142件、売買額は約8200億円
金融庁の集計によると、2025年1月から2026年7月までに証券会社で確認された不正アクセスは計1万9142件に上った。不正に行われた売買の総額は約8200億円に達しており、証券口座乗っ取りによる被害が大規模化している実態が示されている。
今年3月には、不正アクセスや株式売買に関与したとして金融商品取引法違反の相場操縦などの罪に問われた男に対し、東京地方裁判所が懲役3年、執行猶予5年、罰金400万円、追徴金約7800万円の判決を言い渡した。口座乗っ取りを巡っては、被害補償だけでなく不正売買そのものへの刑事責任も問われている。
証券各社は申立書確認前として回答を控える
8月27日時点で、SBI証券は申立書が届いていないとして、内容についてコメントできないとの立場を示した。楽天証券も通知を受領していないため回答できないとし、松井証券も申立書を確認していないとして具体的な見解を示していない。
今回の集団調停では、証券口座への不正アクセスによる損失について、証券会社側がどこまで補償するかが改めて問われることになった。被害者79人は半額補償ではなく、失われた資産を含めた口座の原状回復を求めている。
