国内景気は緩やかな回復基調を維持へ
政府は9月29日にまとめた9月の月例経済報告で、国内景気に対する全体的な評価を8月から据え置いた。景気は緩やかな回復局面にあるとの認識を継続する一方、中東情勢や自然災害が経済活動に及ぼす影響への警戒も維持した。
原油価格や輸入物価の上昇によって海外への所得流出が拡大するリスクに加え、自然災害が自動車をはじめとするサプライチェーンに与える影響も注視する。国内の回復が続く中でも、外部環境には不安定な要素が残る状況となっている。
半導体関連の伸び受け生産判断を引き上げ
個別項目では、生産に対する評価を2年4か月ぶりに上方修正した。これまで横ばいとしていた状況から、全体として改善に向かう動きが確認できるとの判断に切り替えた。
背景には世界的な需要拡大を受けた半導体製造装置などの生産用機械の増加がある。AI関連需要の拡大も半導体分野を支えており、製造業の一部で生産活動が伸びている状況が今回の評価変更に反映された。
景気全体の判断は維持されたものの、生産分野では改善が明確になった形だ。
公共投資は補正予算効果一服で下方修正
生産とは対照的に、公共投資に対する判断は9か月ぶりに引き下げられた。これまでの強い動きを示す評価から、底堅い状態が続いているとの認識に変更された。
2025年度の補正予算に盛り込まれた公共事業の執行による景気押し上げ効果が一巡してきたことが背景にある。公共投資そのものが弱い状況に転じたわけではないものの、これまでの勢いから変化が生じている。
一方、内需を支える個人消費については改善方向の動きが続いているとの評価を維持した。設備投資についても回復が続いているとの判断を変更していない。
原油輸入コスト増加で貿易収支にも変化
貿易・サービス収支については、8月までのほぼ均衡した状態を示す評価から、赤字を示す表現へ8か月ぶりに変更された。原油をめぐる輸入コストの増加が収支を押し下げている。
原油については米国などからの代替調達が進む一方、調達価格の上昇が輸入額を押し上げる要因となっている。エネルギー価格を含む輸入物価の上昇は、国内から海外への所得流出を拡大させる要素でもある。
こうした状況から、中東を巡る動向はエネルギー調達と国内経済の双方に関わる重要なリスクとして引き続き監視対象となっている。
雇用と所得の改善が今後の回復を下支え
今後については、雇用や所得を取り巻く環境の改善と各種政策の効果が国内経済の緩やかな回復を支えるとの見通しを維持した。個人消費や設備投資の評価も変わっておらず、内需には回復の動きが続いている。
一方で、中東情勢による原油価格や輸入物価への影響、自然災害による供給網への影響には引き続き注意が必要となる。金融・資本市場の変動も先行きを左右する要素として挙げられている。
9月の報告では景気全体の回復認識を維持しながら、生産の改善、公共投資の勢いの鈍化、貿易・サービス収支の赤字化という分野ごとの変化が鮮明になった。
