英国の大規模AI施設でマイクロソフトが契約解除
米マイクロソフトは10月19日、英国で進められていた大規模な人工知能(AI)向けデータセンターの開発事業について、主要顧客として参加する契約を取り消したと発表した。対象となったのは、英国のクラウドサービス企業エヌスケールが開発するロンドン郊外の施設である。
今回の判断には、施設の稼働に必要な電力供給網の整備が予定通り進んでいないことが関係している。マイクロソフトは同施設を英国におけるクラウドサービスの拠点として利用する計画だったが、電力の確保に関する問題を受けて契約を解消した。
一方、同社はエヌスケールとの協力関係全体を終了するわけではないと説明している。契約の取り消しは特定の開発拠点に限定され、世界各地で進めるAI関連の事業協力は維持する方針だ。
電力網への接続が遅れ稼働は2030年代の見通し
契約解除の対象となったデータセンターは、英国南東部エセックス州ラウトンに位置する。ロンドン近郊に整備される大規模なAIインフラとして開発が進められていた施設である。
しかし、電力網への接続に遅延が発生し、必要な電力の供給開始は2030年代になる見込みとなった。データセンターの運用には大量の電力が必要であり、今回の計画では供給網の整備が事業を進めるうえでの障害となった。
電力の供給時期が大幅に先送りされる状況を受け、マイクロソフトは同施設に関する契約を解除した。施設の建設計画そのものについては、開発を担うエヌスケールが引き続き取り組む姿勢を示している。
エヌビディア製GPUを2万3000基導入する計画
ラウトンのデータセンターには、AI処理に使用するスーパーコンピューターを設置する予定だった。計画には、米半導体大手エヌビディアが製造する画像処理半導体(GPU)2万3000基の導入が盛り込まれていた。
同施設は英国最大級のAI向けデータセンターとして位置付けられ、マイクロソフトが提供するクラウドサービスの重要な拠点になる計画だった。大規模な計算設備を備えることで、AI関連の処理を支えるインフラとして活用される予定だった。
また、エヌスケールにはエヌビディアが出資しており、半導体供給とクラウドサービスを結び付ける事業としての側面もあった。今回の契約解除により、マイクロソフトが主要顧客となる当初の枠組みは変更されることになった。
両社の世界的なAI事業協力は引き続き継続へ
マイクロソフトは、エヌスケールとの協力を引き続き重視すると表明した。デジタルインフラの整備や世界的なAI事業の拡大を支える取り組みについて、両社の関係を維持する考えを明らかにしている。
同社の広報担当者は、今回の判断がラウトンの施設だけを対象としていることを強調した。英国の特定施設における契約が終了しても、エヌスケールと進める他の事業まで取りやめるものではないとの立場だ。
エヌスケール側も、マイクロソフトとの提携は長期的な関係に基づくものだと説明した。ロンドン一帯の電力網に関する問題は残るものの、今回の事態が他の契約に影響することはないとしている。
代替電源の確保と英国での開発継続が今後の焦点
エヌスケールは、ラウトンのデータセンター開発を継続する方針を明らかにした。電力網への接続が遅れている状況を踏まえ、施設で利用できる別の電力供給手段を検討している。
さらに、英国国内で事業を拡大するため、他の開発候補地についても調査を進めている。今回の問題によって英国市場から撤退するのではなく、電力の確保と新たな拠点の検討を並行して進める方針だ。
英国ではAI分野で世界的な主導権を確立する構想が掲げられており、今回の大型施設における契約解除は、その実現に向けた障害となった。マイクロソフトとの協力関係は維持される一方、ラウトンの施設では電力供給に関する課題が残っている。
