2026年10月27日、衆議院財務金融委員会で食料品の消費税減税を巡る参考人質疑が開かれた。東京大学の渡辺努名誉教授は、税率を引き下げても価格への反映は限定的であり、財政支出に見合う効果が得られないと指摘した。政府が進める減税政策について、家計支援の効率性や物価抑制の実効性が議論された。
政府が進める食料品減税の具体的な制度と実施期間
政府は2027年4月から2年間、食料品に適用される消費税率を現行の8%から1%へ引き下げる計画を示している。関連する法案は国会に提出されており、物価上昇によって負担が増した家計への支援策として位置付けられている。
税率の引き下げ幅は7ポイントとなる。制度上は食品購入時の税負担が軽減されるものの、実際の販売価格が同じ割合で低下するかどうかは別の問題となる。
27日の審議では、税率変更が小売価格にどの程度反映されるのかという点が重要な論点となった。参考人として出席した渡辺氏は、過去の税率変更に伴う価格の動きを踏まえ、政策の費用と効果を検証する必要性を示した。
過去の税率変更から判明した値下げ効果の限界
渡辺氏は、消費税率を引き上げる場合と引き下げる場合では、商品価格への影響が異なると説明した。過去の増税では税率上昇分がほぼ全面的に販売価格へ反映された一方、欧州で実施された減税では、その割合が約60%にとどまったという。
具体的には、税率を7ポイント引き下げても、実際の販売価格の低下は約4%にとどまるという見方を示した。反対に税率が上昇する際には、7%程度の価格上昇につながると説明している。
この違いは、税負担の軽減額が必ずしもすべて購入者に還元されないことを意味する。減税が実施されても、小売価格の引き下げ幅が税率の変更幅を下回る場合、家計が受け取る恩恵は想定より小さくなる。
5兆円の財政支出に対して消費者へ届く金額を試算
今回の減税に伴う財政負担について、渡辺氏は5兆円という規模を示した。そのうち実際に消費者の利益となる金額は約3兆円で、残る約2兆円は販売事業者側にとどまるとの試算を説明した。
これは、財政負担の約60%が消費者に還元され、約40%は価格引き下げという形では家計に届かない計算となる。減税による購買力の回復を政策目的とする場合、投入する財政資金に対する効果が問題となる。
渡辺氏は、こうした価格転嫁の仕組みを根拠に、消費税減税の費用対効果に厳しい評価を示した。税率の変更だけでは、財政支出の全額を消費者への支援につなげられないという指摘である。
食料品価格の上昇と賃金の伸び悩みを分けて分析
渡辺氏は、日本の食料品価格の上昇率が他の先進国と比較して高い水準にあることも認めた。その背景として、2022年以降、海外と国内の価格差が急速に縮小したことを挙げている。
一方、賃金の上昇は緩やかなペースにとどまっていると説明した。生活費の増加に所得の伸びが追い付いていない点を重視し、政策が対応すべき中心的な課題は賃金水準にあるとの認識を示した。
物価の上昇を直接抑える消費税減税と、所得の改善を通じて家計の購買力を高める対策では、政策の目的が異なる。渡辺氏は現在の経済状況について、賃金の低さを改善する施策を優先すべきだと主張した。
家計支援の実効性と財政負担の妥当性が焦点に
今回の参考人質疑では、食料品の税率引き下げが消費者の負担軽減につながる程度について、具体的な数値を伴う議論が行われた。特に、減税に必要な5兆円と消費者に還元される約3兆円との差が注目された。
政府案では減税期間が2年間に限定されているため、税率変更の影響を考える際には実施期間も重要となる。短期間の税負担軽減が家計の購買力にどの程度反映されるかが問われている。
渡辺氏の意見は、税率を引き下げること自体だけでなく、財政資金がどれほど効率的に消費者へ届くかを重視する内容だった。国会では、価格への反映率と賃金改善の必要性が、減税政策を評価する論点として示された。
