発足からわずか1日で総辞職が判明
フランスのルコルニュ首相が率いる新内閣は、発足から1日で総辞職に追い込まれた。組閣は10月5日に行われたが、翌6日には首相がマクロン大統領に辞表を提出し、受理された。首相の在任期間は27日にすぎず、閣僚発表から14時間で総辞職という異例の短命政権となった。
新閣僚の多くが前バイル政権と重複していたため、野党だけでなく与党内部からも「刷新の欠如」との批判が噴出した。内閣崩壊は、国民の政治不信をさらに深める結果となった。
組閣人事への反発が相次いだ経緯
ルコルニュ氏は就任演説で「野党との協調」を掲げていたが、実際の人事ではマクロン氏側近が多数を占め、レスキュール氏を財務相、ルメール氏を国防相に登用。これが「マクロン体制の延命策」とみなされ、野党は「旧政権の焼き直し」と強く反発した。
連立与党の一角を担う保守系の共和党からも離反の動きが見られ、ルタイヨー内相は「約束は反映されていない」とSNSで非難。党の緊急会合を開く姿勢を示していた。
議会の分断と政権運営の難航
昨年の総選挙以降、フランス下院ではどの勢力も過半数を確保できず、与党連立は左派や極右勢力との対立で機能不全に陥っていた。ルコルニュ氏は「各党が譲らず、妥協は困難だった」と語り、辞任の理由を説明。政権の求心力は急速に失われた。
野党勢力は議会解散と総選挙の実施を求めており、極右政党国民連合(RN)のバルデラ党首は「選挙以外に安定は回復できない」と主張。左派連合もマクロン大統領の退陣を要求している。
経済市場にも影響が波及
政権崩壊のニュースを受け、フランス株式市場とユーロ相場は下落した。投資家の間では、政治的な不安定さが財政再建計画に悪影響を及ぼすとの懸念が強まっている。フランスの財政赤字はEU上限の2倍近い水準で、債務はGDP比113.9%に達しており、格付け会社からの評価も厳しくなっている。
市場アナリストのクリス・ボウシャン氏は「政権交代の頻発がフランス資産への信頼を損なっている」と指摘し、欧州市場全体への影響を警戒した。
混迷する政局、マクロン政権の試練
マクロン氏にとって、ルコルニュ氏は過去2年で5人目の首相。短期間での辞任劇は政権の疲弊を象徴しており、国民の支持離れも進んでいる。今後、大統領が総選挙の実施に踏み切るかが焦点となる。フランスの政治的安定は依然として見通せず、欧州全体への波及も懸念されている。
